【タカラヅカ】星組新トップスター・礼真琴が野心家を演じた『アルジェの男』

『アルジェの男』('19年星組・全国)より
『アルジェの男』('19年星組・全国)より

『アルジェの男』は野心に満ちた1人の男に対し3人の女性の愛が交錯し、衝撃的な結末を迎える、タカラヅカでは異色の作品だ。1974年、まさに『ベルサイユのばら』初演の直前に、鳳蘭主演で初演され、その後1983年、2011年、そして2019年と再演されている。2月のタカラヅカ・スカイ・ステージでは最新の2019年星組全国ツアー版を放送する。

物語の舞台は第二次世界大戦前のフランス領アルジェリア。孤児として育ったジュリアンは、悪事を重ねながらも、いつかはこの生活を抜け出し大物になるという野望を抱いていた。アルジェリア総督の財布を盗むのに失敗したことがきっかけでチャンスを掴んだジュリアンは、恋人サビーヌをアルジェの街に残しパリへ向かう。

持ち前の才覚で立身出世を遂げていくジュリアンにとっては、彼に想いを寄せる盲目の令嬢アナ・ベルや総督の娘エリザベートでさえも野望を果たすための道具に過ぎなかった。だが、彼を追って密かにパリにやってきていたサビーヌとの再会により、将来を約束された彼の運命は思いがけない方向に動き始める...。

2019年星組全国ツアー版でジュリアンを演じたのが、星組の新トップスターに就任し、2月に宝塚大劇場でのお披露目公演を控えている礼真琴だ。歌・ダンス・お芝居の三拍子そろった実力派として早くから注目され、スター候補生ぞろいとして知られる95期(2009年入団)の中でも一番乗りでのトップスター就任となった。

プレお披露目公演の『ロックオペラ モーツァルト』では天才モーツァルト役として舞台上を縦横無尽に駆け回り、歌って踊って客席を圧倒した。『アルジェの男』のジュリアン役は、そんな礼があえて優等生イメージの殻を破り、野心に満ちた男の役に挑戦するのが見どころだ。

『アルジェの男』('19年星組・全国)より

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

ジュリアンを一途に想い続ける健気な女性サビーヌに音波みのり。代々ダンスの得意な娘役が演じてきた役でもあり、酒場で踊る場面は見せ場だ。

ジュリアンへの愛ゆえに悲劇的な運命をたどる盲目のアナベルに小桜ほのか、そして、プライドゆえにジュリアンに素直になれないエリザベートに桜庭舞。まったくタイプの異なる3人の女性たちとジュリアンとの絡みも本作の見どころで、星組娘役陣の充実ぶりを感じさせる。

『アルジェの男』('19年星組・全国)より

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

ジュリアンを陥れて一儲けを企む、アルジェ時代の昔馴染みジャックに専科(当時)の愛月ひかる。芸達者な愛月が小悪党を巧みに演じ、凄みをきかせる。一方パリに来てからのジュリアンの友人であり理解者でもあるミッシェルには紫藤りゅう。育ちの良さを感じさせる嫌味のなさで、ジャックとは闇と光の好対照だ。

出番は少ないながらもこの物語のキーパーソンともいえるアンドレ役には期待の若手スター・極美慎。また、これまで演技派のベテランが演じてきたボランジュ総督役では朝水りょうが健闘した。要所要所でこれからの若手が活躍し、新生星組の可能性を感じさせる作品でもある。

作・演出の柴田侑宏は1970年代の"ベルばらブーム"の頃から多くの名作を生み出してきたが、昨年惜しくも亡くなった。男女の機微を深く繊細に描きつつもタカラヅカらしい品格は決して失わない作風はこれまで多くのファンに愛され、また、名作の数々からスターが育っていった。

2020年前半のタカラヅカ・スカイ・ステージでは、今なお再演が重ねられる柴田氏の作品を一挙放送してその功績を振り返る。「一度見てみたかったあの名作」に触れられるこの機会を、どうぞお見逃しなく。

文=中本千晶

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放送情報

『アルジェの男』('19年星組・全国
放送日時:2020年2月9日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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