スーパースター・ジュリーこと沢田研二が大正ロマンを代表する画家・竹久夢二を演じた映画「夢二」

多くの女性と浮名を流した夢二を演じた沢田研二
多くの女性と浮名を流した夢二を演じた沢田研二

幕開けから夢なのか現なのか観る人を鈴木清順の幽玄の世界に引き込む本作。夢二(沢田)は町を歩いていても「竹久夢二さんだわ」と大人気。しかし、そんなことは気にする素振りもなく、頭の中を占めているのは胸を患っている女性、彦乃(宮崎ますみ)と駆け落ちすることだった。先に行って金沢の湖畔で落ち合うことになっていたのだが、彦乃は現れず、夢二は殺人鬼・鬼松(長谷川和彦)に殺されたらしい脇屋(原田芳雄)の遺体を黄色いボートに乗り、湖で探している巴代(毬谷友子)と出会い、その美しさに惹かれていく。新聞で夢二の記事を読んだと巴代に言われ、「女たらし、変態、色魔(と書かれていた)でしょ?」と笑って返す夢二は、喜怒哀楽の感情がめまぐるしく変わる男。女性の膝の上で突然、泣き出したり、突然、大声を出したり、仮そめのカフェ"宵待草"でゼンマイ仕掛けの人形のようにおどけて踊ったりと全く落ち着きがない。芸術家ゆえの苦悩を思わせる場面もあるが、感じるままに筆をとり、インスピレーションで言葉を紡ぎ出し、今を生きる夢二を沢田研二が艶やかに時にコミカルに演じている。

■鈴木清順の強烈な世界観に負けないオーラを放つ

生前、監督は「沢田研二さんからはいわゆる、いい男ぶりを見せてもらった」とコメントしていたが、湖の黄色いボートにひとりで横たわるシーンや派手な和装姿で町をゆくシーンなど、鮮やかな色彩、衝撃的な映像に負けない存在感、オーラを放つジュリーだからこそ、ある意味、ぶっ飛んだ夢二を演じられたのではないかと思う。沢田研二は1979年に大ヒットシングル「カサブランカ・ダンディー」をリリース。俳優、ハンフリー・ボガードをモチーフにした曲の中で、"あんたの時代はよかった"と歌っていたが、自由奔放で呑気な面も持つ夢二の生き方も大正ロマンの時代だからこそなのかもしれない。なお、彦乃からの手紙を持って金沢を訪ねてくるお葉を演じたのは広田レオナ。稲村御舟という画家を坂東玉三郎が演じている。事件の真相を含め、全編にわたって夢なのか現実に起きたことなのか、境目がわからない。その退廃美にどっぷりつかれる映画だ。

文=山本弘子

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放送情報

夢二
放送日時:2023年5月24日(水)18:45~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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