その後、紅緒は行儀見習いで世話になる華族・伊集院家を訪れるも、応答がなかったことから塀を乗り越えるという暴挙に。そこで彼女を待ち受けていたのが、笑い上戸なイケメン将校・伊集院忍少尉だ。「すぐにその気持ち悪い笑い方をやめなさい!」と紅緒に言われてしまうほどにクセの強い笑い声が印象的な少尉を演じているのが、本作で俳優デビューを飾った阿部寛だ。当時は人気ファッション誌のモデルとして活躍していた彼は、白く輝く美しい歯が印象的な笑顔と圧倒的なスタイルの良さで、日本人の父とドイツ人の母を持つ美青年という役柄を、持ち前のビジュアルで体現した。
祖父母の代から決められていた許婚という少尉に対し、反発していたものの、同じ時間を過ごす中で、少しずつ彼に惹かれていく紅緒。酔っ払った紅緒が軍人を相手に大暴れしたことで2人は遠距離の関係となるが、この事件を機に少尉は紅緒へ正式にプロポーズをする。「戻ったら式を挙げましょう。いいですね」と、少尉がいつになく紅緒に強く出るシーンで阿部がみせる真っ直ぐな視線は、誰もが胸をときめかせてしまうはず。そして、その言葉におだやかな微笑みを浮かべながら小さくうなずき、紅緒が少尉に恋をしていることを表現する南野の可愛らしい表情は必見だ。
少尉からの手紙を赤いリップを塗りながら待っていたりと、すっかり恋する乙女になった紅緒。しかし、少尉が日露戦争でシベリアへと出兵し、帰らぬ人となったことから物語は一変。紅緒は、乙女の黒髪を自らの手で切り落とし、伊集院忍の妻として葬儀に出席するが、そのシーンで南野が披露する、白い喪服とボブカット姿の凜々しさは観る者すべてを魅了してしまうほどの輝きを放っている。それまでのやんちゃなじゃじゃ馬娘だった紅緒とは全く異なる、大人の女性ならではの気品をたたえた表情で、紅緒の覚悟をしっかりと表現した南野に、圧倒的な女優としての才能を感じずにはいられないだろう。
本作の出演以降も、さまざまな作品で演技力を磨き、今も日本のエンタメ界で大活躍中の南野と阿部。若かりし頃の彼らだからこそ表現することのできた、みずみずしい紅緒&少尉の恋の行方を、ぜひその目で確かめてほしい。
文=中村実香
放送情報
はいからさんが通る
放送日時: 2023年9月1日(金)18:00~
チャンネル:東映チャンネル
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