葛藤する松岡昌宏の表情がなんともやるせない、ドラマ「連続ドラマW　密告はうたう　警視庁監察ファイル」

かつての同僚を疑うことへの葛藤、自分が知っている過去からの人物像を信じることだけではぬぐい切れない疑念、そして大きな後悔に揺れる佐良を松岡が見事に演じる。佐良はすべてを諦めているのか、目の前の職務に忠実なだけか。自身を語らないがゆえ興味を掻き立てられるという意味で、松岡の演じる佐良は非常に魅力的な主人公だ。

繰り返される捜査一課時代への回想と、佐良がジンイチでの職務を遂行する現在では、登場人物の多くに明らかな違いがみられ、それぞれ現在の在り方に事件がどれほど大きく影響しているか、話の展開には現れないときでもその存在を常に感じずにはいられない。

そしてその変化は皆口も例外ではなく、事件を境に不気味ともいえる変貌を遂げる皆口を泉里香が好演する。自身も関わる事件で婚約者を失った悲壮感からか感情を表に出さないながらも時折見せる視線と口調には強い決意を感じさせ、あくまでも淡々と信条のままに、決して表情を崩さず画面にひりつくような緊張感を与える。終始シリアスな展開の中でも、非常に人間らしい面を随所に忍ばせる佐良を演じる松岡を始め、実力派俳優陣が際立たせる人間関係にも注目したい。

文＝おはぎ

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