坂口健太郎の独特な雰囲気を最大限に感じられる、映画「サイド バイ サイド 隣にいる人」

(C)2023「サイド バイ サイド」製作委員会

寓話的で長回しを多用する映像の中で、坂口は未山を演じるというよりも未山として存在していると言ったほうが相応しい。青々と茂る緑の中をただ歩き、迷子になった牛に優しく声をかけて牧場へ連れていき、恋人とその娘のために台所で野菜を洗い、食卓を共にする。

静かな凪のような場面が続く中で、未山はほとんど表情の変化もない。しかし坂口を見ていると、無表情の中にも表情が見えてくるような感覚に浸されていく、不思議な瞬間が訪れる。それはこの映画で、坂口が演じる未山でしか味わえない、彼だからこそ為せる技といえるだろう。

銀幕に映るこの世界はリアルなのかファンタジーなのか――多くを語らず見る者の解釈に委ねるというスタンスが如実に感じられる本作は、説明的で分かりやすい作品が好まれる時代にあってかなり挑戦的だ。現代の童話のような作品が完成したのも、ひとえに坂口の透明感と歪み、そしてそれを最大限に活写しフィルムの世界に閉じ込めた監督の手腕あってのものだろう。社会の喧騒を忘れ、しばしここではないどこかへ心を放つにはうってつけの作品だ。

文=本永真里奈

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放送情報【スカパー!】

サイド バイ サイド 隣にいる人
放送日時:11月19日(日)21:00~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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