原田知世が映画「紙屋悦子の青春」で見せる静かな演技を分析!「間」を自在に扱うモンスター級の演技力が判明

(C)2006「紙屋悦子の青春」フィルムパートナーズ

明石も悦子に恋慕の情を抱きながらも、航空兵である自分よりも整備担当の永与の方が戦場に赴く可能性が低いため、最愛の人を親友に託したのだった。見合い当日、明石に連れられて紙屋家を訪れた永与は緊張のあまり失敗を繰り返すも、話すうちに彼の不器用さや友への思いやりを感じた悦子は次第に心を開いていく。その後、明石が特攻隊に志願し、間もなく出撃することを知った悦子はショックを受ける。

少ないカット割り、ゆったりとしたカメラワーク、極力省かれた効果音など、戦中でありながらも穏やかな雰囲気を描き出す黒木監督の演出もさることながら、原田の演技が作品世界に大きな効果を生み出している。発声のトーンやせりふ回し、動きに至るまで、隙のない演技で悦子の優しさや穏やかさ、器の大きさ、儚さ、強さなどを表現し、作品世界のリズムをコンダクト。中でも、「間」の使い方が圧巻で、せりふとせりふの「間」や受け答えでの「間」など、けっして豊かな表情や激しい目の動きなどを駆使するわけではなく、「間」の使い方一つで躊躇いや納得していない様子、疑問を飲み込んでいる様子や高揚感など、饒舌に心情を表現している。

(C)2006「紙屋悦子の青春」フィルムパートナーズ

戦時下の切ない恋を描く同作において、原田は時代の中を必死に生きる一人の女性を静かな演技でしっかりと紡ぎ、戦争という逃れられない時代の奔流に振り回された若者の悲哀をじんわりとだが、強烈に観る者に伝えている。彼女の優しく穏やかな"静かな演技"を支える自在に「間」を扱う様子からモンスター級の演技力を感じてみてほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

紙屋悦子の青春
放送日時:1月6日(土)02:00~
放送チャンネル:ホームドラマチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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