サスペンスドラマには探偵役が必須だが、今作で斎藤が演じる若菜は真相を追う役回りでありつつ、第一容疑者でもあるという点が特徴的だ。彼女は警察の追求に対して無実を訴える一方、元記者の夫や若菜への容疑に疑問を持つ白波刑事(蟹江敬三)の力を借りながら真犯人の手がかりを集めていく。
あまり主体的に動くことがなく、何かと振り回されてばかりの役柄だが、随所で凛々しい表情を見せる彼女を信じてついて行きたくなる。巻き込まれ型でありながら周りを巻き込んでいくという不思議なキャラクターが成立しているのは、斎藤の演技からにじみ出る芯の強さゆえなのだろう。
2時間サスペンスといえば欠かせないものが、追い詰められた犯人が涙ながらに改心するシーン。本作でもその"お約束"は健在だが、ここで特筆すべきは斎藤演じる若菜の葛藤だ。
なぜ、何の落ち度もない若菜が殺人の濡れ衣を着せられたのか。なぜ犯人は若菜を恨み、罪をかぶせようとするのか。その謎が明らかになった時、若菜は残酷な真実に直面することになる。それまでの強さが崩れ取り乱す斎藤の姿に、視聴者は不条理な人間の側面を垣間見ることになるだろう。
最近ではドラマ「いちばんすきな花」(2023年・フジテレビ系)で過干渉な母親を演じ好評を博した斎藤だが、本作では幼い娘を心から愛する母親の姿を見せてくれる。そんな一面にも注目したい一作だ。
文=本永真里奈
放送情報【スカパー!】
殺人銀行 (2001)
放送日時:2月28日(水)10:45~
放送チャンネル:テレ朝チャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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