竹内はマラソンランナーの体型に近づけるため、撮影が始まる3ヶ月前から減量とトレーニングに励んだ。最も意識していたのは、「マラソン選手に見えるかどうか」だったというが、ストイックな役作りを経て竹内が演じる、長身でスレンダーな茂木が躍動感たっぷりにトラックを走る姿、勝負に挑む表情、時折見せる爽やかな笑顔に、惹きつけられずにはいられない。
物語の序盤、衰退していく足袋産業に悩む宮沢は、スポーツショップ経営者の有村(光石研)に勧められ、豊橋国際マラソンを息子の大地と見に行き、トップを走りながらも転倒してしまった茂木が、周囲に制止されるまで走り続けようとする姿を見て、足袋の軽さと縫製技術を活かしたランニングシューズを作ると決意する。そして社員たちと「陸王」の試作品を作り上げ、なんとか茂木に履いてもらいたいと奮闘するのだ。社長という責任を負いながら、その情熱としつこさで何度挫折しても諦めない宮沢と、茂木の怪我をしたことからくる葛藤や、ライバルであるアジア工業所属のランナー・毛塚(佐野岳)に抜かれるという焦り、そして勝ちたいという想いがオーバーラップするように描かれていく。
■「こはぜ屋」社員総出の応援の中で、走る直前に茂木が見せる笑顔も印象的
何度も茂木のところに足を運び、監督から「また、あんたか」と呆れられている宮沢。"しつこい足袋屋の親父"ぐらいにしか思われていなかったが、そんな中、茂木は怪我が原因でアメリカの大手スポーツメーカー「アトランティス」のシューズ契約から外されることになってしまう。「怪我をしたのは致命的」と厳しい言葉を浴びせられる中、信頼するシューフィッターから、怪我の再発を防ぐための走法と、ソールを薄くすることを提案されていた茂木は、今まで何度も手にとりながら足を入れなかった「陸王」を初めて履いて練習し、その軽さと走りやすさに驚愕。
一方の宮内は、より優れた軽さと耐久性を兼ね備えた素材「シルクレイ」の特許を持っている飯山(寺尾聰)をも巻き込み、多くの人たちに支えられながら、逆境の連続の中でついに「4代目陸王」を完成させる。
茂木の走りが良くなったことで、手のひらを返すように態度を変える「アトランティス」の社員たち。しかし、ニューイヤー駅伝で茂木は、「陸王」に履き替え、横断幕を持って応援する「こはぜ屋」の社員たちに笑顔を見せて頷く。その場面での竹内の表情は印象的で、感動のシーンだ。
4代目社長とアスリートの諦めない熱い戦いは、どんな結末を迎えるのか?役所の名演と、苦悩と走る喜びを体現した竹内の演技にも注目だ。
文=山本弘子
放送情報【スカパー!】
陸王(全10話)
放送日時:2024年3月30日(土)12:00~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
詳しくはこちら