斉藤由貴の円熟味ある演技が光るサスペンス「警察医・秋月桂の検死ファイル」

⒞大野木オフィス

本作においては、相棒役でもある滝沢警部補を演じる木村祐一もいい味を出している。お笑い芸人として人気を博した後、俳優業に進出した木村は、2006年公開の映画「ゆれる」(西川美和監督)での検察官役が北野武監督に評価され、東スポ映画大賞の新人賞に選ばれた。2009年には監督にも挑戦し、映画「ニセ札」を監督し、自らも脚本と出演も務めている。本作では「アイドルの斉藤由貴を見ながら青春時代を過ごしたので、共演が楽しみだった」と語り、相手役を無難にこなした。だが、斉藤からは「キム兄は、どんな役でもキム兄にみえる」と記者発表の席でダメ出しを受けて苦笑していた。

さらに、謎めいたストーリーの鍵を握る人物・堀内小夜子を演じる高岡早紀の存在感も抜群だ。川北の遺体発見者として登場した後、稲村ケ崎の海浜公園で、母親の正代(岩本多代)の車椅子を押していたところで、桂からの質問を受ける。発疹と口内炎には気づいていたが、もともと川北にはアレルギーがなく、ホームレスの男のことも知らないと証言。後に桂が瀬木一郎教授(橋爪淳)のアルツハイマー型認知症の講演会に誘われ、会場に行くと、そこには普段と違い、おしゃれなスーツに身を包み、化粧をした華やかないでたちの小夜子がいた。講演終了後に声をかけてきた小夜子に、誰に誘われて講演会に来たのかを尋ねると、なぜか小夜子は狼狽し、逃げるように去っていく...。当初の地味な印象から一変し、この場面では際立った美しさとミステリアスな雰囲気を漂わせ、視聴者に強烈な印象を与える。19歳で主演した高岡は、1994年公開の映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」にて深作欣二監督と出会ったことで女優として開眼。同作では日本アカデミー賞主演女優賞をはじめ映画賞を総なめした。そんな彼女の女優としての実力は本作においても健在。裏の顔を持っていそうな謎めいた小夜子の役を完全に自分のものにしているという印象だ。ほかにも瀬木教授を演じる橋爪淳、リストランテ・花井のオーナーの花井達夫(宇梶剛士)、医大時代の仲間・沢木俊祐(相島一之)らの実力派俳優たちが脇を固めている。「発疹と口内炎」の謎に加えて、後に正体が判明するホームレス男の過去と、新たな殺人事件が発生し、複雑に展開するストーリーも見どころ満載だ。

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このように「警察医・秋月桂の検死ファイル」は、斉藤をはじめとする俳優たちの演技合戦が楽しめる上質なサスペンスであり、大人の鑑賞に堪えるドラマとしておすすめしたい。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

警察医・秋月桂の検死ファイル
放送日時:6月28日(金) 14:45~
放送チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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