雪組トップスター・彩風咲奈の力強い演技が見られる、宝塚歌劇「Lilacの夢路」

夢白あや
夢白あや

⒞宝塚歌劇団  ⒞宝塚クリエイティブアーツ

次男フランツ(朝美絢)は行政とのパイプ役となる公務員であり、財務も担う。さらに、鉄道事業実現に向けての鍵となる「ドイツ関税同盟」の調査も担当している。夢に向かって猪突猛進する兄とは対照的な地に足のついた人物であり、等身大な幸せを望んで葛藤する役どころを実直に見せる。このフランツと銀行頭取令嬢ディートリンデ(野々花ひまり)の一筋縄ではいかない恋愛関係からも目が離せない。

三男ゲオルグ(和希そら)は軍人であり、製鉄所運営の中心的存在でもある。さらにゲオルグは、ドロイゼン家にまつわる悪しき「噂」の正体を突き止める役割も果たしていく。「国政を巻き込もう」となったときに力になるのが、ベルリンで官僚の秘書として働く四男ランドルフ(一禾あお)だ。そして、他の兄弟たちと毛色が違うが、じつは兄弟たちを繋ぐ要のような存在が、音楽の才能に恵まれた五男ヨーゼフ(華世京)である。そんな5人が次々と紹介される場面は、さながら「白浪五人男」か「ゴレンジャー」かのようだ。

レールなどを作る「技術」もまた鉄道建設に不可欠だが、そこで力を発揮するのが優秀な技術者であるアントン(縣千)だ。このアントンには出生にまつわる秘密がある。製鉄所の職人たちの場面は、謝珠栄の振付による力強いダンスが見どころだ。
 
メディアの影響力が急速に増していた時代の頼もしい助っ人としてジャーナリストのアイヒタール(諏訪さき)がおり、印刷会社を経営するホフマン(真那春人)は資金面の援助者となっていく。

いっぽうで、鉄道建設という近代的な題材とは対照的な「夢人(魔女)」もおどろおどろしく登場する。最後には彼女たちの「正体」も、悪しき「噂」の真実も明らかになるわけだが、これは「合理的な近代」の勝利を示しているとともに、合理的に説明のつかない「不平等」や「排他性」根絶への願いも込められているように思える。
 
作品の多様さはタカラヅカの醍醐味でもある。個性あふれる出演者たち一人ひとりに目を向けながら、この異色作を楽しみたいと思う。

文=中本千晶

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放送情報【スカパー!】

Lilacの夢路 ('23年雪組・東京・千秋楽)
放送日時:7月14日(日)21:00~ほか
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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