黒木華の静かな演技やアドリブが光る、映画「せかいのおきく」

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そんな彼女を人間らしくありのままで演じた黒木。父親や矢亮との掛け合いはしっかり者で、中次のことを思って悶絶するときは少女のようと、現代を生きる23歳の女性と変わらない感性でおきくを作りあげている。派手な芝居はしないが、おきくのちょっとした表情から彼女が何に喜び何に傷ついたかが手に取るように分かるのは彼女の演技があってこそだ。

中盤で声を失ったおきくは、読み書きができない中次に身振り手振りで気持ちや状況を伝えようとする。江戸時代は手話がなかったため、その必死に気持ちを伝える姿から真剣さがありありと感じ取れる。ちなみにこの身振り手振りは黒木のアドリブ。彼女自身から出てきた仕草のため、より彼女が言いたいことが手に取るように分かる。

特にラストシーンの雪の中での中次とのラブシーンは、あふれる思いが垣間見られるとても美しいシーン。セリフがなくても仕草と表情、佇まいで心情を表現していく黒木の演技の深さを感じ取ることができる。

どのような役でもその世界にしっかりと生きている人物を表現してきた黒木華。本作で見せた少女のようだが凛とした女性をはじめ、現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」(NHK)での勘の鋭いただ者ではない雰囲気を漂わせる女性など、作品によってさまざまな顔を見せる。そんな彼女のセリフを超えた芝居を堪能できる「せかいのおきく」。隠れた名作を堪能してはいかが。

文=玉置晴子

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放送情報【スカパー!】

せかいのおきく
放送日時:8月4日(日)06:40~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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