麻生幾による警察小説を原案とした、全6話の社会派エンターテインメントドラマ。そんな本作で石田が演じているのは、物語の鍵を握る女性・愛子だ。3年前、夫が運転する車に乗っていた時に事故に遭遇し、現在は植物状態となってしまった夫・誠一(二階堂智)の介護を献身的に行いながら、夫の長年の夢を叶えようと開店した理容店を1人で守っている、健気な女性だ。
第1話の終盤から登場する石田は、素顔と見まがうばかりのナチュラルメイクとシンプルでカジュアルなファッション、そして控えめな演技で愛子の人柄を表現。愛子は警察と国際テロリストの攻防に意図せず巻き込まれたか弱き一般人だ、という印象を視聴者に強く残す。
ジュリオが持つ情報を引き出すためには愛子が重要な存在だと確信した住本は、偽名を名乗り、松沢と共に愛子のもとを訪れる。そして毎月支払う一定の金額と引き換えに、捜査への協力を依頼する。突然の申し出に戸惑い、信頼していた松沢に嘘をつかれていたことを咎める愛子に、住本は3年前の事故の原因が愛子の不倫だと突きつけた上で、夫の介護が彼女の自己満足だと断言する。その言葉にカッとなった愛子は「帰れ!」と住本を怒鳴りつける。落ち着いた癒やし系の雰囲気を纏う美女だった愛子が、本性とも呼べる激しさを一気に放出するこのシーンで、石田は感情を爆発させ、鋭い声で愛子の怒りを表現する。それまでの穏やかな演技からは想像できない迫力が生むギャップによって、石田は愛子という人物をより魅力的な存在へと作り上げていくのだ。
その後、住本に協力することになる愛子。初のスパイ行為に緊張の表情を浮かべたかと思えば、スリリングな体験を重ねていく中で、タフで妖艶な美女へと変貌していくさまも見せる。そんな彼女の変化に合わせ、黒や深紅のワンピースへと、衣装も大胆かつタフさを感じさせるものとなり、それらを堂々と着こなす石田の美しさは輝きを増していくばかりだ。
同じ時を過ごしていく中で生まれる愛子と住本の絆など、国際テロリストを巡る息もつかせぬサスペンスと同時に、濃密な人間の愛憎も交錯するサスペンスドラマ。松沢を演じる尾野真千子、住本役の渡部篤郎といった超実力派俳優陣との演技合戦を通して、石田ゆり子という俳優の魅力を再確認できる一作だ。
文=中村実香
放送情報【スカパー!】
外事警察
放送日時:2024年8月25日(日)10:55~
チャンネル:ファミリー劇場
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