窪田正孝が狂気に侵される青年を演じた、映画「初恋」(2019年)

(C)2020「初恋」製作委員会

本作で窪田演じるレオは、歌舞伎町で少女を助けたことをきっかけに彼女と逃亡することになり、少女を追うヤクザや悪徳刑事、そして中国マフィアたちの争いに巻き込まれることになる。

強烈なキャラクターが次々と登場する中で、主人公であるレオはボクシングの才能があるということを除けばいたって普通の青年だ。裏社会の人間たちが泥臭く暴れまくる一方で、レオとして作品世界に立つ窪田の"普通"さはある種の清涼剤であり、本作のリアリティーを担保しているようにも思える。

しかし、そんなレオも次第に凶気に侵食されていく。物語の序盤で余命いくばくもないと告げられた彼は「死ぬ気になれば何でもできる」と自ら退路を絶ち、運命を共にすることになった少女・モニカ(小西桜子)のために裏社会の人間たちとの戦いに身を投じるのだ。リミッターが徐々に外れ、感情のうねりをみなぎらせる窪田の演技にも注目したい。

■三池流の"ラブ"をしっかりと昇華

再度言及するが、この映画はラブストーリーだ。ただし、どう見てもただの恋愛映画ではない。一見するとヤクザ同士の殺し合いが画面を埋め尽くすバイオレンスものだが、そこには一筋のボーイ・ミーツ・ガールな物語がしっかりと根を張っている。生きることに無関心だった2人が心を通わせて成長し、やがて生を受け入れていく王道ストーリーでもあるのだ。

窪田はレオのそっけない態度やさりげない言葉の奥底にほのかな思いを灯しながら、恋物語の主人公としての等身大の姿も映し出している。エンドロールまで見れば確かに「初恋」だったと思える、これまでになかった純愛映画を堪能してほしい。

文=元永真

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放送情報【スカパー!】

初恋(2019)
放送日時:9月8日(日)14:45~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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