【タカラヅカ】宙組・朝夏まなと実咲凜音コンビの集大成「王妃の館」

「王妃の館 -Château de la Reine-」
「王妃の館 -Château de la Reine-」

「王妃の館」は、浅田次郎原作の同名小説を舞台化したミュージカル・コメディーだ。物語の舞台はフランス・パリの高級ホテル「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ」。敏腕ツアーコンダクターの桜井玲子(実咲凜音)は、会社の経営危機を救うべく、このホテルに高額の「光ツアー」と激安の「影ツアー」の2組をダブルブッキングさせて一儲けしようという無茶な策に打って出る。

「影ツアー」を担当する気弱な戸川光男(桜木みなと)は冷や冷やしているが、「光ツアー」を率いる玲子は自信満々。だが、「光ツアー」にはベストセラー作家の北白川右京(朝夏まなと)も新作の取材旅行のために加わっており、彼のわがままにはさすがの玲子も手を焼いていた。 実はこの「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ」は、かつてルイ14世の居城だった。正式な「光ツアー」と昼間しかホテルに居られない「影ツアー」、2組の観光客が騒動を繰り広げる中、突然ルイ14世(真風涼帆)が現れ、このホテルにまつわる物語、かつて心から愛した女性・ディアナ(伶美うらら)との思い出を語り始める。

「王妃の館 -Château de la Reine-」 朝夏まなと

~原作 浅田次郎「王妃の館」(集英社文庫刊)~ (C)宝塚歌劇団 (C)塚クリエイティブアーツ

タカラヅカ版では原作を改変し、スランプに陥っていた右京が小説家として一皮むけていく過程と、ルイ14世の秘めたる恋物語に焦点が当てられている。タカラヅカでは珍しい現代物だが、ルイ14世の回想シーンでは"輪っかのドレス"に身を包んだ貴婦人たちも登場するのが、タカラヅカらしいところだ。原作ファンの人は小説がどのように舞台化されているのかを比較してみるのも興味深いだろう。

見どころは何といっても朝夏まなと演じる北白川右京の「面白カッコ良さ」だ。ちょっと世間からズレている作家であり、一見鼻持ちならないが実は繊細で悩みも深いという役どころで、朝夏ならではの現代的な洒落たコメディーセンスが存分に発揮されている。

「王妃の館 -Château de la Reine-」 実咲凜音

~原作 浅田次郎「王妃の館」(集英社文庫刊)~ (C)宝塚歌劇団 (C)塚クリエイティブアーツ

トップ娘役の実咲凜音は本作が退団公演であった。実咲は歌・ダンス・芝居の三拍子そろった実力派娘役として早くから注目され、2012年、入団4年目にして宙組トップ娘役に就任。凰稀かなめ、朝夏まなと、2人のトップスターの相手役を務めてきた。本作では気丈なキャリア女性であった玲子が右京との出会いで少しずつ変わっていくさまを丁寧に演じ、有終の美を飾った。

個性的なツアー客たちからも目が離せない。純真な心を持つオカマ・クレヨンこと黒岩源太郎(蒼羽りく)、クレヨンと同室になり振り回されつつも心惹かれていく刑事の近藤誠(澄輝さやと)、見かけは浮いているが意外と真面目な成金カップルの金沢貫一(愛月ひかる)とミチル(星風まどか)、右京をひたすら崇拝し常に側に控える編集者の早見リツ子(純矢ちとせ)など、それぞれ原作の小説にも忠実な役作りで、原作ファンも必見だ。

「VIVA! FESTA!」

(C)宝塚歌劇団 (C)塚クリエイティブアーツ

同時上演されたスーパー・レビュー「VIVA! FESTA!」はその名のとおりFESTA(祭り)がテーマのエネルギッシュなショーだ。リオのカーニバル風のプロローグで幕を開け、中欧や北欧に伝わるヴァルプルギスの夜、スペインの牛追い祭りと続く。中でも、日本のYOSAKOIソーラン祭りをモチーフにした中詰は、宙組らしいダイナミックな場面で圧巻だ。フィナーレのトップコンビによるデュエットも、実咲の卒業公演を飾るに相応しい美しさである。オリジナルの芝居と華やかなショーにタカラヅカらしい魅力が詰まっている、楽しさいっぱいの2本立てだ。

文=中本千晶


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放送情報

『王妃の館 -Château de la Reine-』('17年宙組・東京・千秋楽)

放送日時:2018年6月3日(日)21:00~


『VIVA! FESTA!』('17年宙組・東京・千秋楽)

放送日時:2018年6月3日(日)22:45~


チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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