若き日の松重豊の戦慄の演技に震え上がる名作ホラー映画「地獄の警備員 デジタルリマスター版」!

当時はまだ無名で、本作が映画デビューとなった松重の演技も素晴らしい。主演の人気シリーズ「孤独のグルメ」で知られ、実力派俳優として大活躍中の彼だが、本作における富士丸は最低限の言葉しか発せず、佇まいだけで不気味さを感じさせる。黒沢演出の巧みさもあるとは言え、やはり松重の表現力があるからこそ、恐ろしさが倍増する。人を殺してもほとんど高揚しない静かなる殺人鬼・富士丸の迫力に視聴者も震え上がることになる。

黒沢監督は、本作の後にオリジナル脚本「カリスマ」で米サンダンス・インスティテュートのスカラシップを獲得して渡米。帰国後には哀川翔主演の「勝手にしやがれ!!」シリーズ(1995~96年)などでメガホンをとり、以降、「回路」(2001年)、「アカルイミライ」(2003年)などをカンヌ国際映画祭に出品。「ドッペルゲンガー」(2003年)などのホラー作品で評価を高めた。

近年になって再評価されたこともあり、本作は2021年2月に新宿K's cinemaにてデジタルリマスター版がリバイバル上映された。この度、そのデジタルリマスター版が日本映画専門チャンネルで12月22日(日)に放送される。

若き松重豊の怪演に加えて、秋子の上司役で長谷川初範も出演。恐怖に支配されながら、ヒロインを助けて富士丸と戦う役どころだ。軽薄そうな先輩社員・久留米を演じる大杉漣も非常にいい味を出している。富士丸の正体に気づき、最初の犠牲者となる哀れな男・白井役で内藤剛志も登場。テレビ朝日系ドラマ「警視庁・捜査一課長」シリーズなど、重厚な刑事役が板についている内藤がこんな役を演じていたことも感慨深い。ピンク映画には欠かせない名脇役・下元史朗が冒頭で秋子を乗せるタクシー運転手で登場するが、なんとも味わい深くて印象的だ。ヒロインの秋子を演じる久野もスタイル抜群で画面映えする。「富士丸の手に落ちずに助かってほしい」と視聴者に思わせる、儚げな美しさを発揮して好演している。

「孤独のグルメ」のイメージがすっかり定着した今、俳優・松重豊の演技の真髄に迫る本作を見て、ぜひ恐怖に震えてほしい。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

地獄の警備員 デジタルリマスター版
放送日時:12月22日(日)21:00~ 
※22日(日)、26日(木)放送回は、本編前後に松重豊がゲスト出演
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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