だが、齋藤演じるアイには一切の違和感を抱かないどころか、原作に勝るとも劣らない魅力が確かにあった。
冒頭のライブシーンは彼女の本業に近いが、常にニコニコしながら、「みんな愛してるよー」と愛情を振りまく姿は乃木坂46時代の齋藤飛鳥ではなく、完全にアイと重なる。また、アイドルでありながら、2児の母でもあるのがアイというキャラクターの独自性でもあり、難しさ。しかし、齋藤が2人に向ける目線や瞳を見ていると母としての愛情を確かに感じることができ、アイの二面性を巧みに表現している。下手をすれば歳の離れた弟、妹にも見えかねないだけに、齋藤の表現力なくしてアイの実写化は不可能だったはずだ。
そんなアイは念願だったドーム公演当日、自宅に押しかけてきたストーカーに刃物で刺されてしまう。男はアイのファンで子供のことを知った逆恨みで凶行に及ぶが、アイは死ぬ直前までアイでい続けるから美しい。「私にとって、嘘は愛。私なりのやり方でみんなに愛を伝えてきたつもりだよ」と微笑みかけるアイは男の名前も握手会でのエピソードも覚えていた。
原作屈指の名シーンにおいて齋藤は死の生々しさを加えている。途切れ途切れに喋る言葉、乾いた唇、滲む汗など漫画やアニメだけでは表しきれない死の淵に立つ人間を表現。そんな彼女が愛する子供たちに向け、瞳にわずかな希望の光を灯しながら「愛してる」とつぶやく。その刹那、「やっと言えた」と目からキラリと水滴をこぼす様は涙なしには見られない。
ライブなどの"陽のシーン"と、死ぬ間際の"陰のシーン"が序盤から交互に訪れるようなアイは決して簡単な役どころではない。『【推しの子】』は齋藤飛鳥の類まれな表現力に支えられているといえるだろう。
文=まっつ
作品情報
●Amazon Originalドラマ『【推しの子】』
配信開始日:2024年11月28日(木) 21:00よりPrime Videoにて世界独占配信開始
11月28日(木) 21:00 第1話~第6話
12月5日(木) 21:00 第7話~第8話
作品の視聴には会員登録が必要です。(Amazonプライムについて詳しくはamazon.co.jp/primeへ)
●映画タイトル:『【推しの子】-The Final Act-』
原作:「【推しの子】」赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
出演:櫻井海音 齋藤飛鳥 齊藤なぎさ 原 菜乃華 茅島みずき あの
企画・プロデュース:井元隆佑
脚本:北川亜矢子
音楽:fox capture plan
監督:スミス、松本花奈
コピーライト:(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 (C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会
【推しの子】ドラマ&映画公式HP:https://oshinoko-lapj.com
【推しの子】ドラマ作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0DH2TZXGF
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