若き日の吉永小百合が堂々とした演技をみせる貴重なドラマ「二人の縁」

※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。
※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。

秀豊にも女に裏切られた過去があり、男に裏切られた澄子との出会いは、まさに運命的なものだった。年齢こそ離れてはいるが、男と女、ふたつの魂が静かに寄り添う姿を、橋田壽賀子の脚本は、きめ細かく濃密に紡いでいる。

このような文学的なドラマは、近年では少なくなったが、昭和後期には多く、東芝日曜劇場の初期の頃の典型的な作風であった。若き吉永のはじけるような美しさ、伊志井の醸し出す哀愁がなんとも趣深い。伊志井は文楽の出身で映画界に転身。後に新劇の俳優としておもに舞台で活躍した。テレビドラマにも精力的に出演し、東芝日曜劇場の看板シリーズだった「カミさんと私」などで知られる。ドラマでは好々爺ぶりで親しまれ、水前寺清子主演の「ありがとう」にも出演したが、本作放送2年後の1972年に肝臓がんで逝去した。
若き日の吉永小百合にとって、老齢男性を相手役とする設定が新鮮であり、大ベテランの伊志井を向こうに回して堂々たる芝居を見せる本作は貴重な一作と言える。劇中の衣装や小道具にも当時の風俗をしのぶことができて、今見ると非常に味わい深いものがある。共演者には、波多野憲、中原早苗、菅井きん、長谷川哲夫、西沢利明、大坪日出代、今村源兵といった当時に実力俳優がズラリ。吉永以外は皆鬼籍に入ってしまったが、それぞれ舞台やドラマで活躍し、昭和の芸能界を支えた名脇役ばかりである。

若き吉永小百合の堂々とした演技をはじめ、今はもう見られない伊志井ら昭和の名優たちの姿を堪能できる「二人の縁」が、橋田寿賀子ドラマ特集としてTBSチャンネル2で放送される。なかなか放送される機会が少ない貴重な作品だけに、吉永小百合の実力と昭和ドラマの魅力をあらためて再発見してほしい。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

日曜劇場「二人の縁」
放送日時:12月14日(土)07:00~ 
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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