木村文乃が、はじけた表情とハードボイルドな空気を醸し出す!映画「ザ・ファブル」
俳優

(C)2019「ザ・ファブル」製作委員会
ヨウコはファブルのバディだけあって、高い殺しのスキルを持つ。お酒が大好きで、バーなどで居合わせたチャラい男を酔い潰すのが趣味というユニークなキャラクター。本作の冒頭でもバーのカウンターで男と飲んでいて、当初は明るい雰囲気だ。しかし、やがてテンションが上ってきて、酔い潰れた相手をからかって高笑いするなど、おちゃめなところもある。
ヨウコは総じて表情豊かで、そのはじけっぷりも見事なものだ。例えば物語の序盤、ファブルはヨウコの兄・佐藤アキラを名乗ることになり、普通の人として暮らす上で世話になる「真黒カンパニー」を訪れる。社長と会長に対してアキラが無愛想な態度を取った時には、ヨウコが「悪気はないんですぅー」とぶりっ子して取り繕う。さらに社長が、今、自分たちを殺すとしたらどうやるか、とアキラに問うた時には、変顔といっていいくらい焦った顔でアキラを止める。
アキラはほとんど表情を変えないため、表情を激しく変えるヨウコの存在が作中で良いアクセントとなっていて、アキラとのやり取りはもちろん、緻密な構成と併せて物語にテンポを生み出し、「ザ・ファブル」の世界に惹き込んでくれる。
■"ハードボイルド"な空気が漂う絶妙な表情は必見!
狙い、狙われる世界で生きているヨウコだけに、刃の上にいるような鋭い空気を感じさせるシーンもある。アキラを付け狙う2人組とバーで顔を合わせた時は、軽くあしらうも何かを感じ取ったような不穏な面持ちとなり、アキラがボスの命令を破り武器の準備をし始めた時には、目を見開き、声を荒げて真剣にアキラを心配する。しかし、アキラの想いを知ると、一時、強く迷った後に、手助けをするのだ。そんなシーンでは、アキラとのバディ感もしっかり感じられる。
そしてラスト前、アキラと暮らす部屋の下のガレージから銃声が聞こえた時に、ヨウコはかすかに悲哀が漂う絶妙な表情を見せる。守りたかった命、消えるべくして消える命。その狭間を心が漂っているような空気には、いわゆる"ハードボイルド"の匂いが感じられる。恐らくそれは、ヨウコが殺しの世界で生きる者だから見せる表情であり、それによってヨウコという人物と、作品がより深まっていると言えるだろう。
シリアスとギャグが入り混じり、テンポ良く展開するストーリーに巻き込まれながら、木村文乃の好演を存分に楽しんでほしい作品だ。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
ザ・ファブル
放送日時:2025年9月20日(土)21:00~、9月24日(水)14:00~ほか
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
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