山下美月、「遊びを忘れないこと」が大切だと再認識 映画『火喰鳥を、喰う』インタビュー

俳優

映画『火喰鳥を、喰う』に出演する山下美月

――本編で「日々の暮らしをささやかに続けること」について夕里子が語る台詞がありました。そうした考えに山下さん自身が重なる部分はございましたか?

「仕事をしていると、どうしてもエンタメ過多になってしまうというか。最近だと自分が声優をさせていただいたアニメの映像が電車で流れていたり、本屋さんに行ったら自分が表紙になっている雑誌が置いてあったり、日常のなかに、自分がエンタメの一部として溶け込んでいることに、理解が追いついてないんです。

私は多くの人のことを知らないのに、自分のことは知られているって、すごく不思議で非現実的。私にとっての現実は、毎日家に帰って、お風呂に入って、ごはんを食べること。だけど、タレントとして世の中に出て...というものが非現実としてある。『自分にとってどちらが幸せなのだろう』と考えたときに、答えを出せないなって思うんです。もちろん、仕事を頑張って名誉をいただいたりすることも幸せですが、『誰も知らない場所で生きてみたい』みたいな憧れもあって...。

それって、夕里子とすごく似ているなと思うんですよね。彼女にも別の暮らしの選択肢があったからこそ、そうした台詞が出てきたのかなと感じました」

――お仕事をするうえで、一番大切にしていることはどんなことでしょうか?


「つい最近まで忘れていたと反省しているのですが、『遊びを忘れないこと』ですね。たとえばラブコメをやったときに、"いいものを見た"と思っていただくために仕事をしているのに、自分の仕事の目的が"ちゃんと台詞を入れて現場に行かなきゃ"とか"監督の望むものを表現しなきゃ"とか、別のところにいっちゃっていた気がするんです。忙しくて自分の気持ちを後回しにしていたからこそ、"面白いものを作りたい"という気持ちが薄れちゃっていたな、とすごく反省しました。

それからは、ひとりで海外にたくさん行って、自分のことを知らない人たちに触れて、改めて"自分は日本で人を笑顔にさせたい"という気持ちが湧きました。常に仕事のなかで遊びを取り入れるって大切だなと思いましたし、いまも大事にしています」

――来年デビュー10年を迎えますが、この10年間は山下さんにとってどのような期間でしたか?

「本当にあっという間でしたし、"駆け抜けてきた"という気持ちもあるのですが、芸能活動をしてからは、学校やプライベートの友達を軸として生きてこなかったのもあって、いまは『自分の人生をどうしたいのか』を改めて考えています。

仕事の将来像や、"こういう人になりたい"は10年かけて固まってきましたが、『自分の未来像』はあまり考えてこなかった。正直、考えること自体が悪いことだと思っていたので、これからたくさんの経験や出会いを通じて、そうしたことを明確にしていけたらいいなと思っています」


山下美月

取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI

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公開情報

映画「火喰鳥を、喰う」
2025年10月3日(金)公開

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