高倉健が昭和を生き抜いた特攻隊として悲哀を訴えかける... 妻役・田中裕子との息の合った芝居も必見「ホタル」

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(C)2001「ホタル」製作委員会

没後11年を経て、なおも深く愛され続ける名優・高倉健。その高倉とコンビを組むことが多かったのが、降旗康男監督である。高倉とは1966年公開の「地獄の掟に明日はない」を皮切りに20本の作品を残し、"黄金コンビ"とも称された。1978年公開の「冬の華」、1981年公開の「駅STATION」、1985年公開の「夜叉」など、名作ぞろいだが、そんな黄金コンビの作品の中から、今回は2001年公開の映画「ホタル」をご紹介したい。

■「夜叉」や「鉄道員」で高倉と黄金コンビを組んだ降旗康男監督の作品

高倉健が漂わせる悲哀の重みを堪能せよ
高倉健が漂わせる悲哀の重みを堪能せよ

(C)2001「ホタル」製作委員会

東映創立50周年記念作品でもある本作は、激動の昭和を生き抜いた特攻隊の生き残りである男と、その妻の人生を描くヒューマンドラマ。脚本は、「義務と演技」の竹山洋と降旗監督が共同で担当。また、撮影は「鉄道員」など降旗映画の大半を担当した木村大作が務め、独特な映像美を作りあげている。

第二次世界大戦の終戦間際、特攻隊員だった山岡(高倉健)は奇跡的に生き残った。その罪悪感を抱えながら、妻の知子(田中裕子)と鹿児島で漁業を営んでいた。腎臓を患っている知子を気遣いながら、静かに暮らす山岡の元に、青森で暮らす特攻隊仲間の藤枝(井川比佐志)が八甲田山で自殺したとの報せが届く。山岡同様に特攻隊の生き残りとしての苦悩を抱えていた藤枝は、天皇崩御を機に自らの人生に幕を引いたのだった。戦友の自死に衝撃を受けた山岡は、辛い過去を向き合う覚悟を決める。

やがて山岡は特攻隊員たちから"知覧の母"と呼ばれて慕われていた、知覧の富屋食堂の女主人・山本富子(奈良岡朋子)に依頼され、特攻で戦死した朝鮮出身の金山少尉(小澤征悦)の遺品を届けるために韓国へと旅立つ。じつは金山は知子の許嫁だった男であり、戦争で運命を狂わされたのだった...。

本作は戦争の悲劇を背景にした「愛と贖罪の物語」であり、「人生の余白」を感じさせる日本的な名作と言える作品だ。前述した木村大作による映像美に加えて、静謐さを湛えたストーリーと高倉健の抑えた演技が高く評価されている。

高倉健の後年の代表作として、ファンに語り継がれている一方で、テンポがゆったりしていることや物語に起伏があまりないことで、否定的な意見もある。夫婦愛を主軸に据えているが、戦争映画として捉えることもできる本作は、特攻で死んでいった若者たちの無念さや生き残った者の悲哀を訴えかける。

■高倉と相性が抜群な妻役の田中裕子の丁寧な芝居にも注目

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放送情報【スカパー!】

ホタル
放送日時:2025年11月10日(月)18:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
出演:高倉健、田中裕子、小林稔侍、夏八木勲、井川比佐志、奈良岡朋子、中井貴一、原田龍二、水橋貴己
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

詳しくは
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