そんな同作は、miletだけでなく中島にとっても特別な作品となったよう。クランクアップ時には「グループを卒業してターニングポイントの時期に迎えた作品でもあるので、自分の人生の中で本当に大きな節目になる作品だと思っています」とコメントを発表しているが、その言葉に違わず、元の世界とパラレルワールド、さらには劇中劇で描かれる(リクが執筆した)SF小説のキャラクターと、3通りの人生を演じ分ける姿が印象的だ。

全てを失って自分の身勝手さに気づいたリクは、パラレルワールドでもう一度ミナミと出会い直し、失った愛を取り戻そうと奔走する。そんなパラレルワールドでの2人のシーンでも、親しみと愛おしさが通奏低音のように流れていて、それが2人の運命的な結びつきを感じさせる。初共演とは思えない中島とmiletの息の合った空気感も、リクの再生を後押しする。

さらに、2人の人生を盛り立てる"名脇役"となっているのが、miletが書き下ろした主題歌「I still」。公開直前に行われたイベントでも、miletが歌うこの「I still」を聴いて涙が止まらなくなり、監督から強制退場させられたという裏話を明かしていた中島。それも2人がリクとミナミとして心を通わせたからこそのエピソードといえるだろう。キャリアの分岐点で出合った"神林リク"というキャラクターを通して、改めて中島の等身大の魅力を再発見できる1作だ。

文＝酒寄美智子