勝地涼×河合優実が"失踪"の謎に揺れる心を体現 舞台『私を探さないで』が突きつける後悔と罪悪感

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舞台『私を探さないで』
舞台『私を探さないで』

河合が演じる晶もまた、ただそこにいるだけで空気を変える人物だ。言葉が少ない場面でも、一言一言に重さがある。晶の存在は、"失踪した人"というより、"残された人間が抱え続けた時間"そのもののように感じられる。そして、古賀に「大好きだった」と伝える場面。声を荒げる瞬間の切迫感が圧巻だ。感情を爆発させるというより、抑えてきたものがとうとう溢れ出てしまった、という感じがする。だから観ている側も、ただの名場面として消費できず、胸が苦しくなる。河合の演技は、派手さよりも「逃げられなさ」を作るのがうまい。さらに晶は、アキオの記憶の"偏り"を突いてくる。自分のことは都合よく覚えているのに、忘れている部分もある。そういう覚えていることと忘れていることの差を突きつけながら、記憶がどれだけ本人の都合で作られてしまうものかを、容赦なく見せるのだ。特に印象的なのは、泣き顔でも笑顔でもない、表情があまり動かない状態のまま、声だけが鋭く強くなるところ。顔は静かなのに声だけが跳ね上がる、そのギャップが観客の胸に刺さる。

小泉が演じるユイ子は元教師で、いまは作家でもある。だからこそ、アキオや晶の人生を題材にしながらも、どこか「自分のことではない」という距離で語ってしまう。その態度が冷たいのか、それとも相手を救うためなのか、小泉ははっきり答えを出さず、観客に考えさせる。本作は、生と死、本当と嘘の境界があいまいな世界を描いている。それなのにユイ子は、小説という形にすることで、そこに線を引こうとする。きれいに整理できるはずがないと分かっていながら、それでもやろうとする。その無理を承知の強引さが、ユイ子の魅力であり、同時に怖さでもある。

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