妻夫木聡が切に体現する医師の葛藤と想い――映画「感染列島」で描かれる未曾有のウイルスの恐怖

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2020年初頭から2023年にかけて、世界を席巻した新型コロナウイルス。誰もが経験したあの不安、あの混乱を、予言するかのような映画があった。2009年に公開された「感染列島」だ。

主演は妻夫木聡で、東京都いずみ野市立病院で働く救命救急医・松岡剛を演じている。未知のウイルスとの戦いの中で、患者を救えないことへの無力感や葛藤、また、医師としての責任や想いなどを、妻夫木はその演技力で余すところなく体現している。ここでは本作での妻夫木の演技について見ていきたい。

■妻夫木聡の演技でじわじわと高まっていく、パンデミックへの恐怖

妻夫木聡が未曾有のウイルス禍で患者を救うため奮闘する医師を熱演
妻夫木聡が未曾有のウイルス禍で患者を救うため奮闘する医師を熱演

(c)2009映画「感染列島」製作委員会

物語の当初、病院は平穏な様子で、松岡が治療を終えた老夫婦と笑顔でやり取りしている様子が映し出される。松岡が患者を思いやる親切な医師であることが伝わってくるシーンだ。

だがその直後、怪我をした急患などに混じって、発熱した男性患者が病院を訪れる。診察したのは松岡で、症状からはインフルエンザが疑われた。キットによる検査は陰性だったが、その患者を始まりとして、パンデミックが日本に広がっていくことになる...。

翌日、松岡が病院に行くと、発熱した男性患者の容態は悪化していた。さらには男性の妻を皮切りに、次々と新たな発熱患者が運び込まれ、一気に院内は混乱に陥る。最初の男性患者は処置の甲斐なく死亡。その時の松岡の心情を、妻夫木は演技で痛いほどに伝えてくる。キット検査が当てにならなかったことへの驚きと焦り。男性患者が亡くなったことを妻に伝える時の、震える声。

マスクとゴーグルをつけていても、松岡のやるせなさや無力感が、その瞳と声ににじみ出ている。同時に、そういった妻夫木の演技によって、今までにない恐ろしい何かが始まろうとしている状況が、じわじわと伝わってくる。

■苦難の中でも前に進む医師の想いを体現した妻夫木の好演が光る

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