妻夫木聡が切に体現する医師の葛藤と想い――映画「感染列島」で描かれる未曾有のウイルスの恐怖

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(c)2009映画「感染列島」製作委員会

困難を極める未知のウイルスとの戦いの中で松岡が必死に治療に当たるさまを、妻夫木は丁寧かつ真摯に体現していく。ともに治療にあたっていた医師が死亡した時には、病院の屋上でやりきれない表情で佇み、感染者に優先順位を設けるトリアージが必要となった時には、何とかしようと必死に食い下がる。

物語の中で、松岡は語る。「もうこれ以上、誰も死なせたくないんです」。そんな松岡の想いを、それぞれのシーンで体現する妻夫木の演技はさすがのもので、その姿や映像からは、未曽有のウイルスが広がる中での不安や葛藤がリアルに感じ取れる。

特に印象的なのが、かつて松岡が通っていた大学で助手を務めていた医師・小林栄子(檀れい)とのやり取りだ。小林はWHOのメディカルオフィサーとなっていて、いずみ野市民病院で指揮を執る。お互いに考え方が違い、ぶつかり合うこともあるが、小林が長野に転任する時に、松岡はかけがえのないものの存在を実感しているような表情で小林を抱きしめる。過酷な状況下でも、いや、そんな状況だからこそ、失いたくないもの。そんな想いが松岡の表情に現れていて、ついホロリとしてしまう。

果たして、新型ウイルスの治療法は見つかるのか。松岡ら医師たちは、大切な人を守れるのか。強い意志を持って未曽有の事態と戦った人々の生きざまを、最後まで見届けてほしい。

文=堀慎二郎

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