シリーズが続くにつれて、2人の関係にも少しずつ変化が表れていく。第1作では、冬彦が自由に動き、寅三がそれに振り回される構図がはっきりしていた。だが、回を重ねるごとに、ただ噛み合わないだけではない関係に見えてくる。冬彦は寅三の怒りの裏にある責任感やまっすぐさを分かっているし、寅三もまた、冬彦の突飛な言動の奥にある誠実さを感じ取っている。相変わらずぶつかり合いながらも、いざという時には同じ方向を向く。その積み重ねが、このシリーズならではの魅力になっていった。
そして2024年の「警視庁ゼロ係〜スカイフライヤーズ〜」では、そうした積み重ねがよりはっきり見えていた。舞台は"なんでも相談室"から警視庁の特命捜査対策室へと変わるが、冬彦と寅三の関係は変わらない。むしろ、これまで何度も同じようなやり取りを重ねてきたからこそ、2人の関係がより自然で深いものになっているように見える。小泉の冬彦は、最新作ではもう"変わった人物"であることを強く説明しなくても、その人物像が自然に伝わる。立ち姿や話し方、ひと言の返しだけで、冬彦らしいズレや頭の回転の速さがしっかり見えてくるからだ。一方の松下も、怒ったり呆れたりしながら、ただ振り回されるだけではなく、冬彦のことをきちんと理解したうえで受け止めているように映る。「警視庁ゼロ係〜スカイフライヤーズ〜」には、長くシリーズを続けてきた2人だからこそ出せる空気があった。
「警視庁ゼロ係」シリーズは、事件の面白さやテンポの良いやり取りを楽しめる作品でありながら、小泉と松下が長い時間をかけてコンビの関係を深めてきたシリーズでもある。第1作では、まだどこか噛み合いきらない面白さがあり、「警視庁ゼロ係〜スカイフライヤーズ〜」では、言葉にしなくても通じるような呼吸が生まれていた。いまの小泉を見ていると、冬彦という役が、彼の穏やかさや品のよさだけではない魅力を広げた役だったことがよく分かる。やわらかな雰囲気を持つ人だからこそ、その人物が少しだけ場の空気を外すことで、冬彦というキャラクターの面白さが際立つ。一方の松下にとっても、寅三は、強さと厳しさ、そして人を見捨てない温かさをあわせ持つ芝居の魅力が早い段階からよく表れていた役だった。
だから「警視庁ゼロ係」シリーズは、いま振り返るとさらに面白い。事件の謎解きや掛け合いの楽しさだけでなく、その奥には、小泉と松下が時間をかけて"迷コンビ"の関係を育ててきた積み重ねも感じられる。「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜」から「警視庁ゼロ係〜スカイフライヤーズ〜」までをたどることで、このシリーズが長く愛されてきた理由も、よりはっきり見えてくるはずだ。
文=川崎龍也











