9歳で子役デビューし、5月4日に32歳の誕生日を迎えた俳優・伊藤沙莉。自身のナチュラルな魅力をたっぷりと発揮し、実在の女性をモデルにしたヒロインを好演した作品が「風のマジム」(2025年)だ。
5月にWOWOWにて放送される本作は、沖縄でサトウキビからラム酒を作ろうとする女性の奮闘を描くヒューマンストーリー。社内のベンチャーコンクールを活用してビジネスを立ち上げ、契約社員から社長になった金城祐子の実話を基に、人気作家・原田マハが書き上げた同名小説を原作としている。
(C)2025 映画「風のマジム」 (C)原田マハ/講談社
伊藤が演じるのは、平凡に生きてきた主人公・伊波まじむ。那覇で豆腐店を営む祖母・カマル(高畑淳子)や母・サヨ子(富田靖子)と暮らしながら、通信会社の契約社員として働いている。誰にでもできる簡単な仕事ばかり任されて、夢や目標もなく過ぎる毎日に漠然とした不安を抱いていた。ある日、社内ベンチャーコンクール募集のチラシを見つけた彼女は、"純沖縄産のラム酒"を作る企画で応募。無謀にも思われた夢を実現するため、周囲を巻き込みつつも真っ直ぐに突き進んでいく。
沖縄の方言で"真心"を意味する"まじむ"は、その名の通り、真心を込めて前向きに全力で挑む。夢に向かって突き進む女性と親和性が高い伊藤には、ハマり役のキャラクターと言えるだろう。時代や職業は違えど、情熱を胸に諦めず戦い抜くまじむは、伊藤にも重なる。その姿は逆境の中でこそ眩く光り輝く。
都合良くはいかない厳しい現実も生々しい失敗にも、悩み、泣き笑いしつつ、逞しく立ち向かっていく。不安や緊張、喜びに自信。伊藤は演じるというよりも、まじむとして生きて感じた通りに心を動かす。感じたことがそのまま伝わってくるような豊かな表情、柔らかな沖縄の言葉も相まって、彼女の人となりがリアルに映し出される。真っ直ぐな思いで周りを動かしていく自然体の生き様は、親近感を抱かせ、共感を生む。
伊藤が役に向き合い、のびのびと演技ができるのも、まじむ同様に周りの人々に恵まれたからかもしれない。祖母・カマル役の高畑淳子は、さすがの演技力で厳しくも愛に溢れた"おばあ"を体現。富田靖子演じる母・サヨ子も、口うるさいこともあるが大切な娘を支え励ます。歌に乗せてテンポ良く準備をし、食卓を囲む3人の間には、一緒に生きてきた家族の絆を感じさせた。
また、伊波家が行きつけにしているバーのマスター・吾朗には、染谷将太がキャスティングされた。まじむがラム酒の魅力に気づくきっかけを与える重要な役どころだ。吾朗は、いつでも彼女を温かく迎え入れ、微笑みを絶やさない。多くは語らずともその夢に寄り添い、さりげなくサポートする。飾らない佇まいや自然な間は、伊藤とも息ぴったりで心地良い。さらに伝説の醸造家・瀬那覇仁裕役は滝藤賢一が務め、真摯に酒造りに取り組む独特な人柄を好演した。伊藤をはじめとする演技巧者が顔を揃えたことで、一層リアルで深みのある物語が紡がれていく。











