一方、兼見の亡き妻の姪であり、彼の身の回りの世話をする里尾を演じたのが池脇千鶴だ。彼女の存在は、死を求めて生きる兼見にとって唯一の「生への繋ぎ目」である。
叔父であり、心ひそかに慕う相手でもある兼見を前にしたときの、慎ましくも芯のある佇まい。過剰な演技を排し、膳を運ぶ手つきや衣服を畳む何気ない所作一つひとつに、命がけの献身と切ない情愛を宿らせていた。
悲劇的な運命へ向かって冷たく冷え切っていく物語の中で、彼女が画面に持ち込む温もりと清潔感があるからこそ、兼見が彼女に見せる一瞬の安らぎがより一層切なく際立つのである。
藩主家と対立する「御別家」の帯屋隼人正を演じた吉川は、登場シーンの短さを忘れさせるほどの異彩を放っている。
兼見と刃を交える隼人正は、ただの「悪役」ではない。
直心影流の名手としての絶対的な強さ、そして自らの正義と威厳を疑わない風格が求められる役柄だ。
吉川晃司の恵まれた体躯とキレのある身体能力、そしてロックミュージシャンとして培われた威風堂々たる存在感は、まさに隼人正そのもの。兼見との決闘シーンで見せる重厚な構えと一刀の鋭さは、武士としての矜持が激突する名場面だ。
©2010「必死剣鳥刺し」製作委員会
この3者の魅力が重なり合って生まれる時代劇の傑作『必死剣 鳥刺し』は、単なる殺陣の爽快感を追う剣劇ではない。時代劇の枠を超えて人が生きる哀歓を体現した彼らの名演は、いま改めて観返しても色褪せることのない輝きを放っているのだ。
文=於ありさ











