(C)2025 映画「TOKYO タクシー」製作委員会
木村が浩二を作り上げるうえでこだわったのが、夜勤明けに自宅で眠る際に使用するアイマスクだ。木村はこれを"妻・薫(優香)が使い古したもの"という裏設定にした。単なる小道具としてではなく、家計をやりくりする妻を気遣う浩二の思いまで込めたものだったことがうかがえる。
こうした細部への意識があるからこそ、浩二という役は単に"木村拓哉がタクシー運転手を演じている"という存在ではなく、仕事と家族を背負って日々を生きる1人の男性として立ち上がってくる。
(C)2025 映画「TOKYO タクシー」製作委員会
そして本作で特に注目したいのが、倍賞との芝居だ。2人のシーンの多くは、タクシーの車内で撮影されたという。倍賞は木村について「勉強家で、何かしら常に考えている真面目で優しい方」と映画の公開セレモニーで語り、芝居を重ねる中で信頼関係を築いていったことを明かしている。
タクシー車内の会話シーンの撮影では、LEDウォールに車窓を映すバーチャルプロダクションも活用。後部座席にいる倍賞の表情が見えにくい状況でも、木村は声の波長からすみれの感情を感じ取りながら芝居を続けたという。
ここに表れるのが、木村の"聞く芝居"だ。すみれの言葉を受け止め、表情や声、短い言葉で返していく。自分が前に出るのではなく、相手の芝居を受けることで浩二という人物像を立ち上げていくのだ。
その魅力が凝縮されているのが、夕焼けに染まるベイブリッジを走る場面だ。過去を振り返って涙を流すすみれに対し、浩二は今を生きているからこそ目の前の景色を見ることができる、と語りかける。静かなやり取りの中に、それまで2人が車内で交わしてきた言葉や時間が重なり、浩二の不器用な優しさがにじむ。
相手の言葉を受け止め、必要な瞬間には自分の言葉を返す――。そんな"聞く芝居"を通して、木村は家族や仕事を抱えて生きる浩二という普通の男性に、静かな温かさと生活の匂いを与えている。
(C)2025 映画「TOKYO タクシー」製作委員会
華やかなスターとしてではなく、目の前の1人と向き合い、その言葉を受け止めることで存在感を見せる木村拓哉。山田洋次監督とのタッグで引き出された、これまでとはひと味違うその魅力を、「TOKYOタクシー」でぜひ確かめてほしい。
文=HOMINIS編集部









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