©2024 映画「正体」製作委員会
鏑木と出会う人々も、それぞれ異なる形で彼を見つめる。
那須として現れた鏑木と出会う安藤沙耶香(吉岡里帆)は、交流を重ねるなかで彼の無実を信じるようになる。
一方、野々村和也(森本慎太郎)はベンゾーの正体に疑いを抱き、酒井舞(山田杏奈)は桜井として働く鏑木に恋心を寄せる。そして、刑事の又貫征吾(山田孝之)は、逃亡を続ける鏑木を追う。
「信じる」「疑う」「恋する」「追う」――鏑木をめぐるそれぞれの視線が交差することで、観る側にも「この男は何者なのか?」という問いが残り続ける。
ここで印象的なのが、横浜が鏑木の感情を大きな身振りだけで説明しないことだ。ふとした表情や目線、相手との距離感に、その人物が抱える思いをにじませる。姿を変えた先で人との関係が生まれるほど、逃亡者としての緊張感と、1人の人間としての揺らぎが同時に浮かび上がってくる。
だからこそ、5つの顔を見比べていくと、その奥にいる"同じ鏑木"の存在も見えてくる。外見を変えることそのものではなく、変化した姿の奥に一貫した人物を存在させる。そこに横浜の演技の確かさが表れている。
「正体」での演技が高く評価された横浜は、第48回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞。さらに2025年公開の「国宝」でも第49回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞している。役柄の輪郭に合わせて身体や佇まいを変えながら、人物の内面まで立ち上げていく表現力は、横浜流星という俳優の大きな魅力の1つだ。
さまざまな人物を演じる現在だからこそ、「正体」をあらためて見返してみると、横浜流星が1人の人物をどのように作り上げてきたのか、その役作りの確かさを感じられるはずだ。
文=HOMINIS編集部







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