昭和のトップスター・西城秀樹が母親思いの青年役で見せたかわいらしさ

2018年に惜しまれつつこの世を去った、昭和のトップスター・西城秀樹。現在人気を誇るアーティストたちの間でも昭和歌謡をリスペクトする声が挙がっている中で、ヒデキを再評価する人たちも多い。今回は、歌手としての西城秀樹ではなく、俳優としての彼の魅力に迫ってみたいと思う。

1972年に歌手デビューを果たし、郷ひろみ、野口五郎と共に「新御三家」と呼ばれて人気を博したヒデキは、1974年に放送されたTBS系ドラマ「寺内貫太郎一家」にレギュラー出演し、俳優としての評価を一気に高めた。

同作品は、昭和を代表する国民的ドラマとも評され、ヒデキは小林亜星演じる主人公・貫太郎の長男である周平を演じた。番組の名物だったのが、貫太郎と周平による親子ゲンカの場面。本気で取っ組み合う2人の姿に視聴者はハラハラさせられたものだが、リアルを追求する演出の久世光彦により、中途半端な演技は一切許されず、真剣にケンカしていたという。ついには収録中に小林に投げ飛ばされたヒデキが腕を骨折したという武勇伝も残された。歌手として人気絶頂だったヒデキにとっては、長時間の拘束となるドラマに出演するだけでも大変だったはずだが、過剰な芝居を求められても文句1つ言わなかった彼のプロ根性には共演者やスタッフも舌を巻いたそうだ。

「遠くはなれて子守唄」に出演した西城秀樹と乙羽信子

(C)HBC

さらに映画『愛と誠』(1974年)に主演し、TBS系ドラマ「あこがれ共同隊」では、郷ひろみ、桜田淳子と共演するなど話題を提供したヒデキ。そんな彼が、俳優としての新境地を開いたと評価された作品が、1980年にTBS系で放送された「遠くはなれて子守唄」である。この作品が11月25日(水)深夜よりTBSチャンネル2で放送される。

同作品で、ヒデキは乙羽信子と親子役を演じ、その温かみのある演技が絶賛された。ヒデキ演じる若き自動車修理工が、遠く離れて住む母親(乙羽)の体調が悪いことを心配し、夢だったポルシェを諦めて母との同居を決意。2人暮らしを始めた母と息子の戸惑いや心の通い合いを、ほのぼのと描いたドラマである。

それまでのワイルドなイメージを封印し、本当に母親思いの真っすぐな青年を演じたヒデキの純真な可愛らしさに触れられる。NHKの「おしん」などで知られる演技派のベテラン・乙羽との息もぴったりで、まさにハートウォーミングな良作。脚本は映画『鉄道員(ぽっぽや)』などで知られ、人間ドラマならピカイチの岩間芳樹。日本民間放送連盟賞優秀賞受賞作品でもある。奇をてらわず、素直に感動できるドラマであり、心が洗われるような昭和の良き時代を思い起こさせる一作だ。

文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)

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放送情報

日曜劇場「遠くはなれて子守唄」
放送日時:2020年11月25日(水)0:00~
チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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