若かりし頃の中村倫也が映画デビュー作で見せた確かな存在感と演技力

「癒やし系」や「ゆるふわ」といった形容詞で親しまれる一方で、どこかつかみどころのない存在感が魅力の中村倫也。コメディーからバイオレンス、シリアスなドラマまで、幅広い役柄を演じ、その都度違う顔を見せてきた彼は、31歳の時にNHK朝の連続テレビ小説「半分、青い」でブレイク。その後も、ドラマ「初めて恋をした日に読む話」「凪のお暇」などの話題作に次々と出演し、一躍人気俳優の仲間入りを果たした。

そんな彼の映画デビュー作であり、お笑い芸人・ダンカンの初監督作となる2005年の映画『七人の弔』が、8月8日(日)に衛星劇場で放送される。物語は、7組の家族が河原でキャンプをするところから始まる。一見楽しそうに見えるこのキャンプだが、実はこのキャンプは子供たちの臓器を売買するためのツアーだった。親たちは児童虐待の常習者であり、子供たちと引き換えに大金を得ることに同意する"毒親"たちだった。しかもキャンプ途中に脱落者が出れば、ひとりあたりの取り分が増額になると知り、大人たちによる醜い足の引っ張り合いが始まる。そんな親たちのたくらみを聞かされていなかった子どもたちだったが、大人たちの異様な光景に次第に違和感を覚えるようになる......。

映画『七人の弔』より

(C)2004『七人の弔』製作委員会

テーマは児童虐待、人身売買といったスキャンダラスなものだが、そんな重いテーマとは裏腹に、長きにわたって構成作家、芸人として人間をシニカルに観察してきたダンカンが織りなす毒っ気のあるユーモアが全編を覆っており、人間の愚かさ、滑稽さを浮かび上がらせる異質のファミリー映画となっている。

劇中には、"七人の侍"ならぬ"七人の子供たち"が登場するが、中村が演じるのはその子供たちのリーダー的存在である河原潤平、15歳。渡辺いっけい演じるギャンブル狂の父・功一の元手を集めるために、盗みを働かされてきたという悲しい境遇を持つ少年だ。

(C)2004『七人の弔』製作委員会
(C)2004『七人の弔』製作委員会

本作が映画デビュー作ということで、今と比べると見た目でも芝居の面でも非常に初々しいなと感じるのは間違いないのだが、それでいて、特徴的な声やどこか一歩引いたようなひょうひょうとした雰囲気、そしてふとした瞬間に見せる狂気など、われわれが今、テレビや映画、舞台などで見ている"俳優・中村倫也"のたたずまいは、この頃から変わらずにあったようにも思える。

当時発行されたパンフレットのキャスト紹介文にも「本作がデビュー作であり、大人と子供の両方を持ち合わせる雰囲気、その存在感ある演技力には親役俳優等から絶賛の声が挙がった」との記述がある。そんな彼のルーツを知るためにも、見逃せない一本となっている。

文=壬生智裕

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放送情報

七人の弔
放送日時:2021年8月8日(日)18:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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