清原果耶の繊細かつ力強い演技に心を揺さぶられる...絶望の淵に立たされた家族を描くサスペンス

今年1月30日に20歳の誕生日を迎え、女優としてさらなる飛躍が期待されている清原果耶。ヒロインを務めた2021年度前期放送のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」をはじめ、若き演技派として映画やドラマなど数多くの作品に出演し、国民的女優の階段を着実に上り続けている。また、現在放送中の連続ドラマ「ファイトソング」では、運命的な出会いをしたミュージシャンと期間限定で"恋の取り組み"をするも、そこから三角関係に発展することになるヒロインをみずみずしく好演している。そんな彼女が「人間の制御できない能動的な部分が、物語や登場人物を通じて脳裏に刻まれるような思いになった」と振り返る作品が映画『望み』である。

原作は「犯人に告ぐ」「検察側の罪人」の雫井脩介による同名ベストセラー小説。執筆時、著者が最も悩み苦しみ抜いたという、渾身のサスペンスとなっている。一家4人、はたから見ればしあわせそうに暮らしていたように思われた石川家だが、ある時、長男の規士が家を出たきり帰らず、連絡が途絶えてしまう。どうしたのかと心配する家族だったが、そんな時、規士の同級生が殺害されたというニュースが流れる。どうやら事件には規士を含む3人の少年が関与しているようで、そのうちの1人は殺されているかもしれないという噂が広がる。規士は被害者なのか、加害者なのか、それとも......。父、母、妹、それぞれの"望み"が交錯するさまが描かれる。

『望み』に出演する清原果耶、堤真一、石田ゆり子
『望み』に出演する清原果耶、堤真一、石田ゆり子

(C)2020「望み」製作委員会

メガホンをとったのは、映画のみならずドラマ、音楽、演劇など幅広いジャンルで活躍する堤幸彦。「TRICK」や「SPEC」といったエンターテインメント作品に定評がある堤監督だが、その一方で『悼む人』『人魚の眠る家』など重厚な人間ドラマにも確かな手腕を発揮している。脚本を担当するのは、『お引越し』『八日目の蝉』といった映画作品をはじめ、昨年手がけたドラマ「最愛」も話題を集めた奥寺佐渡子。またスタッフも堤監督の『悼む人』『人魚の眠る家』などを手がけた精鋭が集結。繊細な感情の動きを丁寧に積み重ねるために、ほぼ順撮りで撮影を実施しており、パンフレットのインタビューでも堤監督が「これまで50本ほど映画を撮ってきましたが、今回ほどチームに助けられたことはないかもしれないほどに幸福な座組でした」と自負するほどに、重厚な世界観を構築している。

息子が殺人事件に関与しているかもしれないと言われて苦悩する父親と母親を演じるのは、堤真一と石田ゆり子。現在放送中のドラマ「妻、小学生になる。」では、妻の生まれ変わりとなる小学生を演じる子役の毎田暖乃とともにせつなくも温かい夫婦像を見せている2人だが、本作では一転。追い詰められるような緊張感の中で、悲しみに向き合う親の役に挑んでいる。そして清原が演じるのは娘の雅。明るいしっかり者で、兄に対しても家族としての深い愛情を抱く一方で、兄が関与したかもしれない事件をめぐる世間の強烈な風当たりの強さに押しつぶされそうになり、自分の未来が崩れ落ちることに恐怖心を抱くという複雑な心理を繊細に、かつ力強く演じている。

そんな清原の演技を「うわさには聞いていましたが、怖いくらいにうまい」と評した堤監督。清原演じる娘・雅の存在、言動が堤演じる父親の心情を揺さぶり、あらわにしていくが、そんな絶望的な状況の中でも石川家はひと筋の光を見いだしていく。そんな家族を演じた堤、石田、清原、そして兄役の岡田健史を含めた演技のアンサンブルは、非常に見応えがある。

文=壬生智弘

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放送情報

望み
放送日時:2022年2月20日(日)21:00~ほか
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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