感情を表に出さない演技に惹きつけられる...綾瀬はるかが女性版"座頭市"を演じる

2000年ホリプロスカウトキャラバンにて審査員特別賞を受賞し、デビューを果たした綾瀬はるか。2004年のドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」で難病に冒されたヒロインを瑞々しく演じ、注目を浴びた。以降、数々のドラマや映画に出演。残酷で孤独な運命を背負った女性を演じた「白夜行」(2006年)、「ホタルノヒカリ」(2007年)ではキュートな干物女、とシリアスからコメディまで幅広い役柄を早くから演じ分けてきた。業界屈指の美肌とされる透明感あふれる美貌はもちろん、バラエティ番組で見せる天然ぶりや飾らないキャラクターも好感を抱かせる。

『ICHI』で主演の綾瀬はるか
『ICHI』で主演を務めた綾瀬はるか

ICHI (C)映画「ICHI」製作委員会

彼女が名実共に人気女優の階段を上り始めたのは2008年頃だろうか。この年、『僕の彼女はサイボーグ』、『ICHI』、『ハッピーフライト』と立て続けに映画の主演やメインキャストを務めた。中でも初の時代劇アクションに挑戦した『ICHI』は、今やスタントなしのアクションもこなす綾瀬にとって貴重な経験を積んだ作品だ。

ICHI (C)映画「ICHI」製作委員会

WOWOWプラスで4月8日(金)に放送される本作は、かつて勝新太郎が当たり役とし、北野武の監督・主演映画も話題となった傑作時代劇シリーズ"座頭市"の女性版。綾瀬は盲目の若い女性ながら悪党どもを刀1本で斬り伏せていく女座頭・市に扮した。『ピンポン』(2002年)などを手掛けた曽利文彦監督が得意とするCG技術、勝新太郎も担当した殺陣師・久世浩による 指導に加え、持ち前の運動能力の高さを発揮した綾瀬のアクションも見応えがある。

ICHI (C)映画「ICHI」製作委員会

また、市を女性に置き換えたことで、他を寄せ付けない強さだけではなく内面もより深く描かれていることにも注目したい。芸人一座を追われて1人で旅を続ける市は、心を閉ざして暗闇に生きている。盲目かつ感情を表に出さない抑えた演技が必要とされた。いつもの愛らしい笑顔を封じ、空虚な瞳の奥に悲しみや絶望を抱えた孤独なヒロインを丁寧に演じた。大沢たかお演じる過去のトラウマから刀を抜けない男・十馬と少しずつ心を通わせていく中で、「生きているのか死んでいるのか分からない」と珍しく怒りを露わにする場面や戸惑いながら十馬の愛に触れる姿も印象深い。市が見せる感情の揺れは、若さゆえに荒削りで原石のような輝きを放っている。襤褸を纏い、無表情で黙っていても観る者を惹きつける圧倒的な存在感を見せた。

ICHI (C)映画「ICHI」製作委員会

本作以降は、主演を務めたNHK大河ドラマ「八重の桜」(2013年)や、多数の主演女優賞を受賞した是枝裕和監督作『海街diary』(2015年)、今年2度目の新年スペシャル版も放送した人気コメディ「義母と娘のブルース」(2018年)など活躍は途切れることなく続く。この春には「元彼の遺言状」で初の月9主演も決まり、新たなヒット作誕生への期待度も高い。癒しキャラから時代劇、キュートなコメディエンヌにノーブルな女性まで。作品名を見ればそれぞれ印象の異なるキャラクターが浮かぶことが、演技力の高さを示している。愛されキャラはそのままに凛とした雰囲気を纏う女性へ成長し、国民的女優となった綾瀬はるか。その過渡期にあたる本作では、大女優への進化を予感させる演技を見せた。少女と大人の中間で揺れる危うくも儚い輝きを楽しみたい。

文=中川菜都美

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放送情報

ICHI

放送日時:2022年4月8日(金)18:45~、2022年04月23日(土)5:45〜

チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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