山田孝之が1人で事件の真実を追いかける編集者を演じたノンフィクションサスペンス『凶悪』!

今から9年前の2013年に公開され、多くの人に衝撃を与えたのが山田孝之主演の映画『凶悪』だ。原作はノンフィクションベストセラー小説「凶悪 -ある死刑囚の告発-」で実際に起きた残忍な殺人事件に基づいて実写化。『孤狼の血』(2018年)、『死刑にいたる病』(2022年)などで知られる白石和彌が初めて長編映画を撮った作品でもあり、山田は日本アカデミー賞最優秀助演男優賞にノミネートされている。

『凶悪』で主演を務めた山田孝之
『凶悪』で主演を務めた山田孝之

(C)2013「凶悪」製作委員会

20代最後の出演作となった『凶悪』で演じているのは隠蔽された殺人事件の真実を明るみにすべく死刑囚、須藤(ピエール瀧)の供述をもとにひとりで追い続けていく記者。藤井。公開当時、藤井の心情を表現するに当たって"11段階ぐらいの変化をつけて演じた"と語っているが、当初は半信半疑で死刑囚の発言に淡々と耳を傾けていた藤井が事件の闇に迫るにつれ、冷静さを見失っていく様は心理的な怖さを感じさせる。キレたらやばい極道の須藤と、徐々に殺人に快楽を覚えていく不動産ブローカーの木村(リリー・フランキー)が犯したことは凶悪そのものだが、藤井という記者の存在があるからこそ、見る者は映画のタイトルについて想いを馳せる。そんな山田の役柄、演技を振り返ってみると?

(C)2013「凶悪」製作委員会

(C)2013「凶悪」製作委員会

■記者をのめり込ませたものは正義の暴走か?それとも?

ある日、藤井が勤めるスクープ雑誌の編集部に獄中の死刑囚・須藤から手紙が届き、藤井はまだ誰にも話していない犯罪が3つあると打ち明けられる。その事件を依頼した首謀者がシャバでのうのうと暮らしていることが許せないから、記事にして告発して欲しいと頼まれるのだ。とはいえ、記憶が曖昧な須藤が話していることには確証がない。そんな以前の事件のことはネタにならないと編集長に言われるものの、藤井は死刑囚の言葉を頼りに地図を作成し、現地に出向き、コツコツと足で取材を続けていく。死刑囚が"先生"と呼ぶ男は本当に保険金殺人に関与しているのか?無表情で淡々と聞き込みを続ける藤井が映画の中で、唯一、笑顔を見せるのが死刑囚との面会時に「もう一発ネタ出しますよ」、「あ!これ先生関係ねーや」と言われるシーン。当時、悪役を演じることが多かった山田孝之が"真面目か?"と思われる面白味のない男に扮するのは意外と思いきや、"先生"こと木村にたどり着き、確信を持った瞬間、編集部で「これは闇に埋もれちゃいけない事件なんですよ!」と声を荒げ、目つきも変わっているのが怖い。この事件に巻き込まれるまでは編集部の仕事を従順にこなしていたであろう藤井の中に潜んでいた別人格が引き出されていく背景や感情を山田が丁寧な演技で表現している。

(C)2013「凶悪」製作委員会

■サスペンスはどこにでもある家庭の歪みにも潜んでいる

映画の中にはたびたび藤井の家庭の現実が描かれる。仕事に没頭して家族を顧みない藤井と認知症の母の介護で疲れ果てている妻。いつも逃げてばかりだと妻に泣かれ、責められ、そこには安らぎも笑顔もない。非日常的な犯罪をいじめっ子のようにへらへらして楽しむ木村。鬱屈した日常を送っているまっとうな藤井。そのコントラストに考えを巡らせずにはいられない。認知症の母親以外、主要キャスト全員が誰かに憎悪を抱いているという捉え方もできる。山田のズシーンと重たい役が「凶悪」というタイトルに深みを持たせる作品。正義の暴走が罪へと変わることがある社会について、そして"人間とは?"という永遠のテーマについて考えさせられる。

文=山本弘子

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放送情報

凶悪
放送日時:2022年6月4日(土)23:30~、6月21日(火) 4:45〜
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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