西村大輝絶望的とも思えた故障を乗り越え、走る喜びを噛みしめる。

栃木県宇都宮市をホームタウンとする地域密着型プロスポーツチーム・宇都宮ブリッツェンに所属する西村大輝選手。絶望的とも思えた故障を乗り越え、走る喜びを噛みしめる25歳だ。現在は、同じチームに所属する増田成幸選手のオリンピック出場を実現するために、アシスト役に徹するが、自身の夢は日本一のロードレーサーになること。そして再び海外の大舞台で走ること。

――自転車レースを始めようと思ったきっかけは？
「もともと父がアマチュアレースに参加するのを趣味としていて、『ちょっと走ってみないか』と父に誘われたのがきっかけです。5歳の頃に初めて、大人の大会と一緒に開催されていた子どものレースに出場しました。」

――現在の西村選手の目標は？
「9月に行われる全日本選手権ロードレースで優勝することが今シーズン最大の目標です。」

――どんな選手を目指していますか？
「チームから与えられた役割をちゃんと遂行できて、『西村に任せればひと安心』というような信頼のおかれる選手にまずはなることです。今は、(同じチームの)増田(成幸)選手がオリンピックの代表権を争っている状況ですが、増田選手のUCIポイントが1点でも多く獲得できるようサポートに回っています。責任感をもって走る増田選手の強さは憧れますね。」

――1月から宇都宮ブリッツェンに移籍されましたが、練習環境やチームの雰囲気についてはいかがですか？
「宇都宮の街は練習環境として完璧で、すごく選手に向いている街だと感じます。チームの雰囲気もものすごく良いです。スタッフの雰囲気づくりが上手く、常にベテラン選手が後輩を気遣ってくれる。本当に居心地の良いチームだと感じます。また、ほかのチームにはあまりない特色として、いろいろなイベントに参加したり、自分たちでイベントを開催したりもします。そのほか、メディアに出演するなど競技練習以外にも初めてのことに挑戦する機会が多くあり、楽しんでいます。」

――1日どのくらい練習されるのですか？
「レースを控えているかどうかによりますが、長い時で1日5～6時間練習しています。」

――練習後やお休みの日にリフレッシュするために何をされていますか？
「昼寝をしたり、早めの睡眠をとったり、可能な限り『眠る』ことですね。あとはよくスーパー銭湯に行ってリラックスするのが好きです。筋肉がほぐれることで自転車のパフォーマンスにつながるということも大きいとは思うのですが、頭もかなりリラックスできます。」

――今後の夢はありますか？
「日本でしっかりと結果を出して、チャンスがあればもう一度ヨーロッパのチームに所属したいと思っています。競技人生の中では、もちろん将来的にはオリンピックに出場したいです。ただ、結果はもちろん重要視しているのですが、走れること自体をとてもありがたく感じています。18歳の頃に腰椎ヘルニアを発症し、2年半は競技から離れて3回の手術を経験しました。怪我をしてからは『普通のことに感謝する気持ち』が自分の中に芽生えて、自転車に乗れる喜びを実感しています。『めっちゃ自分、自転車競技好きやな』と改めて感じましたね。」

――お父様がきっかけで始められた自転車競技ですが、支えられていると感じる時はありますか？
「レースの前には父は家族のグループLINEで『頑張れ』とメッセージをくれます。雑誌のインタビュー記事を見ては、僕をいじってくるのですが...。『ほんまか？オマエ～』みたいな...(笑)」

――レースに向けてどのような準備を大切にされていますか？
「トレーニング以外にも、自分のコンディションの良い体重にしっかりと仕上げることも大切です。コースによって適した体重は左右されます。登りの多いコースだと、より軽い方が良いですし、下りだと重い方がスピードが出ます。とはいえ、自分のベスト体重よりも痩せすぎることはダメなんです。食事は量とメニューのバランスに気を付けて、自炊しています。ちなみに、今は目先のレースが中止になり、少し気が緩んで一晩で顔が浮腫んでしまっているんです(笑)」

西村大輝プロフィール

1994年生まれ。東京都出身。高校卒業後、2013年にシマノレーシングに所属し、国体成年男子ロードで2位に。その後、故障のため長期療養に入るが、2016年にレースへ復帰。2017年にはNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ(NIP)に合流し、国際舞台へ。NIP解散後、2020年より宇都宮ブリッツェンに所属。