映画監督スティーヴン・スピルバーグを作り上げたもの

「スピルバーグ!」
「スピルバーグ!」

スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』が世界的に大ヒットしたことによって、彼の歴代監督作品の総興行収入が100億ドルを突破した。これは史上初の快挙として大きな話題となったが、2位以下のピーター・ジャクソン監督、マイケル・ベイ監督、ジェームズ・キャメロン監督らの総興行収入が60億ドル台であるということもあり、この記録が破られることは当分ないだろうといわれている。しかし、そうしたヒットメーカーとして確固たる地位を確立する一方で、アカデミー賞作品賞を獲得した『シンドラーのリスト』をはじめ、『太陽の帝国』『カラーパープル』『アミスタッド』といった社会派ドラマも手掛け、高い評価を受けてきた。エンターテインメント作品と社会派作品、まるで振り子のように両軸を行き来できる柔軟さに、スピルバーグという映画監督の作家性があるといえるだろう。

「カラーパープル」

(C) Warner Bros. Entertainment Inc.

スピルバーグは熱心な映画ファンとして知られ、発表する作品にも、その影響が色濃く反映されている。そんな彼が初めて観た映画は、幼少期、父親に連れられて観たセシル・B・デミル監督の『地上最大のショウ』だった。同作の劇中では、列車が車にぶつかり、そして転覆した列車が別の列車に衝突するというシーンが最大のスペクタクルとなっているが、スピルバーグ少年もその映像に魅せられた1人。そのシーンを再現するべく、列車のおもちゃをぶつけて遊び、当時夢中になっていた8ミリカメラで、その様子を収めることを考えついたという。その原体験が、映像作家スピルバーグを形成する1つのピースとなったのは間違いない。

「JAWS/ジョーズ」

(C) 1975 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

観客をハラハラドキドキとさせる見せ物小屋的なスペクタクル描写は、彼のキャリアの中で幾度となく登場。スピルバーグ作品を語る上で欠かせない要素となる。理不尽に追いかけてくるタンクローリーの恐怖を描き出し、注目を集めた1972年のテレビ映画『激突!』。人間に襲い掛かるサメの恐怖を描き出し、世界的ヒットメーカーの仲間入りを果たした『JAWS/ジョーズ』。当時最先端の技術だったCGを駆使し、襲い掛かる恐竜の恐怖を描き出した『ジュラシック・パーク』。宇宙人が操る兵器トライポッドから逃げまどう人々の姿から、911後の恐怖を描き出した『宇宙戦争』など、特に"正体の分からない何者かが襲い掛かる恐怖"を描き出した作品に傑作が多い。

「E.T.」

(C) 1982 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

また、幼少期、父に連れられて流星雨を見たことがきっかけで、宇宙に興味を持つようになったというスピルバーグ。その宇宙への思いが後に『未知との遭遇』『E.T.』『A.I.』といったSF作品に結実していく。これもまた、彼の作家性をひもとく上での重要な出来事となった。いろいろな面で父親からの影響が大きかったスピルバーグだが、19歳の時に両親が離婚したことにより、母を捨てた父親に対して嫌悪感を抱くようになった時期があったという。特に『未知との遭遇』『E.T.』をはじめとした初期作品には、父親というものに対する屈折した思いが色濃く投影され、それが彼の作家性とも呼べるものとなっていた。だが後に、それが誤解であったことが分かり、父親と和解。その後に手掛けた『宇宙戦争』や『リンカーン』などでは、父親の愛情が描かれるようになるなど、その作風に変化がもたらされた。スピルバーグ自身も、父親との関係が創作に大きな影響を及ぼしていることを認めている。

常々、スピルバーグは、自分自身が抱えてきたものを正直に吐き出すことが、創作の根にあると公言してきた。ドラマからSF、アクション、コメディーなど、スピルバーグ作品を語る上での幅はとても広いが、そういった側面からスピルバーグ映画を観てみるのも非常に興味深い。

文=壬生智裕

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放送情報

『スピルバーグ!』独占日本初放送記念 特集:スピルバーグ!スピルバーグ!!スピルバーグ!!!

放送日時:2018年8月5日(日)08:45~

※8月12日(日)07:50~ほか

「スピルバーグ!」「激突!」「JAWS/ジョーズ」「未知との遭遇[ファイナル・カット版]」「E.T.」「カラーパープル」「太陽の帝国(1987)」「アミスタッド」「A.I.」

チャンネル:スターチャンネル2

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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