渡辺明棋王との棋王戦五番勝負に挑む!糸谷哲郎八段の強さの理由

糸谷哲郎八段
糸谷哲郎八段

トップ棋士の中でも個性的な将棋を指すのが糸谷哲郎八段だ。玉の薄さや陣形がバラバラになることをものともしない剛腕で、対局者の名前を隠しても誰か分かるほどの力戦派だ。昨年末に行われた第46期棋王戦挑戦者決定戦では敗者組を勝ち上がり、2連勝で挑戦権を獲得した。

糸谷は17歳でプロ入り。そのまま新人王戦でも優勝するなど、いきなりの活躍を見せる。新人王になった時のスピーチでは「将棋界は斜陽産業」と発言して物議を醸したが、それは業界に対する危機感があっての発言で、プレイヤーとしてだけではなく、普及方面にも力を入れていく。関西若手棋士の「西遊棋」を中心となって立ち上げ、さまざまなイベントを開催し続けている。これはのちにタイトルを獲得した時でも変わらなかった。多忙なタイトルホルダーが普及面にここまで力を入れるのは非常に珍しいことだ。

初の大舞台は2014年の第27期竜王戦。初の挑戦者決定戦に進出すると、挑戦者決定三番勝負では羽生善治名人(当時)を2勝1敗で破りタイトル挑戦。七番勝負では森内俊之竜王(当時)を4勝1敗で下し、初のタイトルを獲得した。翌年の防衛戦では渡辺明棋王(当時)にタイトルを奪われるものの、トップ棋士として各棋戦で活躍。2016年には第64期王座戦で2度目のタイトル挑戦(五番勝負は羽生に敗れ奪取ならず)。今回の棋王戦はそれ以来のタイトル戦となる。

他には早指しも得意で、NHK杯戦、銀河戦ではそれぞれ2度ずつ決勝に進出している。だが、NHK杯戦はどちらも羽生に、銀河戦は渡辺と藤井聡太二冠と、中学生棋士の壁に跳ね返されているが、いずれ優勝する日がくるだろう。

角交換型の将棋を得意とし、まれにそこから振り飛車にもするが基本的には居飛車党だ。冒頭で触れたように薄い玉型を腕力でまとめあげる。名が冠された「糸谷流右玉」は対振り飛車の右玉で、自玉頭が戦場になる力の要る将棋だが、糸谷の持ち味が存分に発揮される(ただし現在は採用していない)。

また、玉さばきにも定評があり、裸玉でのしのぎや入玉も得意としている。持ち時間を含めた勝負術にも長け、しばしば早指しでリードした時間を背景に、複雑な指し回しを合わせて苦しい将棋を逆転していく。

2月に開幕する棋王戦五番勝負では渡辺明棋王に挑む。これまでの対戦成績は5勝15敗と苦戦を強いられており、かつては竜王を奪われ、銀河戦の決勝でも敗れるなど大きなところで苦杯をなめさせられた相手でもある。厳しい相手ではあるが、持ち前の爆発力でこれまでの借りを返すことができるだろうか。双方得意の角換わりが中心のシリーズとなるだろう。

文=渡部壮大

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放送情報

第27期 銀河戦 本戦Bブロック 10回戦 糸谷哲郎八段 vs 飯塚祐紀七段
放送日時:2021年2月5日(金)13:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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