テレビ番組ライター・てれびのスキマがTVコメディアン・志村けんの魅力を語る「彼の腕にかかればオチが分かっていても笑ってしまいます」

2020年3月29日に惜しくもこの世を去った伝説のコメディアン・志村けんをしのび、1980年代後半~1990年代前半の出演バラエティが特集放送される。1980年代後半に"ピン"としてテレビでさらなる輝きを見せていたコメディアン・志村けんを、テレビっ子のライター・てれびのスキマが振り返る。

志村けんの代表番組「加トちゃんケンちゃん光子ちゃん」
志村けんの代表番組「加トちゃんケンちゃん光子ちゃん」

「加トちゃんケンちゃん光子ちゃん」Ⓒイザワオフィス

■松本人志もリスペクトするコント一筋のコメディアン

いつの頃からか「ドリフ大爆笑」(1977年~1998年)の中に5人そろったコントがなくなっていった違和感と寂しさは強烈に印象に残っています。思えばそれが、志村けんさんの"巣立ち"だったのでしょう。実際、少し後に掲載された雑誌のインタビュー(「SWITCH」1991年11月号)で「ドリフ大爆笑」のコントの収録について「リハーサルも撮りも別」と明かしています。さらには「僕は今のいかりや(長介)さんが面白いとは思わない」や「コントは今一緒にできないでしょうね」とまで、挑発的に語っています。

「オールスター夢の球宴('88.10)」Ⓒイザワオフィス

志村けんさんは1980年代後半、「ドリフ大爆笑」内で生まれた名物キャラクターを独立させた「志村けんのバカ殿様」(1986年~)や「志村けんのだいじょうぶだぁ」(1987年~1993年)を立ち上げ、完全に"独り立ち"を果たしました。そんな状況で戦うためには"いかりや長介"という芸人としての父親に反発せざるを得なかったのでしょう。一方で、「志村けんのだいじょうぶだぁ」では"志村けん"という強力なリーダーの下、他のレギュラーメンバーとの関係性で笑わせる、まさに初期ドリフターズの笑いの構造を踏襲していました。「今思うと、やっぱり僕の笑いの原点はドリフのパターンだった」と、本人も自著「変なおじさん」で振り返っていますが、2人は共通する笑いの哲学を持った合わせ鏡のような存在だったのだと思います。

志村けんさんは常に子供からお年寄りまで分かりやすい動きの笑いにこだわっていました。彼の腕にかかればオチが分かっていても笑ってしまいます。むしろ「待ってました!」となるのです。そんなコント一筋を貫いていた志村けんさんをリスペクトする芸人さんは数多くいますが、ダウンタウンの松本人志さんもそのひとりです。彼は自著「遺書」の中で、自分が認める"男ットコ前"のひとりとして、志村けんを挙げていました。しかし、1990年代半ば頃になると、そのダウンタウンら若い世代の芸人さんたちの先鋭的なコントに押され"志村けんのコントは古い"という風潮で苦戦しました。そんな彼に援護射撃をしたのが、他ならぬ松本人志さんでした。「志村けんはいかがでしょう」(1993 年~1995年)の特大版(1994年)に、ダウンタウンはゲスト出演を果たしていた。この世代を超えた、トップ芸人のリスペクトフルな夢の共演に、当時心が踊ったことはよく覚えています。

てれびのすきま●1978年生まれ、静岡県出身。ライター。テレビっ子。『週刊文春』、「読売新聞」などでテレビ関係のコラムを連載。著書に『タモリ学』、『1989年のテレビっ子』、『芸能界誕生』、『史上最大の木曜日』など。

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放送情報

春満開!!志村けんはいかがでしょう 特大版
放送日時:3月30日(木)21:00~
放送チャンネル:ファミリー劇場

加トちゃんケンちゃん光子ちゃん(88.5.20)
放送日時:3月29日(水)23:50~
放送チャンネル:ファミリー劇場

オールスター夢の球宴('88.10)
放送日時:3月28日(火)23:50~
放送チャンネル:ファミリー劇場

ドリフ大爆笑
放送日時:3月1日(水)06:30~
放送チャンネル:ファミリー劇場

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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