この拷問シーンでは、海外での配信を念頭に置いた表現が求められる現在では、確実に規制されてしまうであろうハードな描写が連続します。放送当時ですら「残酷すぎる」「観ているのがつらかった」という声があがっていました。しかし、この拷問によってカネキはリゼを超える喰種へと覚醒し、主人公としての輪郭がしっかりするため、絶対にカットしたり、マイルドな描写に逃げたりすることはできない。そういった意味では、今から10年前に制作された作品だったからこそ、原作マンガの持つ魅力を削ぎ落とすことなくアニメ化できたと言えるかもしれません。
花江さんと以前、お話しした際に、「自分は水でありたい」と言っていたことが、すごく印象に残っています。「何にでも染まるし、どんな形にもなれる水のように、作品に適応できる人間でありたい」と花江さんは話していました。今後も、いろいろな役を演じられると思いますが、ここまで精神的にも肉体的にも過酷な状況に置かれるキャラクターはないような感じがします。
そして、食事に対する強いこだわりを持つゆえに、喰種対策局からは「美食家(グルメ)」というコードネームで呼ばれている青年・月山を演じているのが、宮野真守さんです。ヒトと喰種のハイブリッドでもあるカネキを食べるために接近し、彼がケガをした際はハンカチで血を収集し、大切に保管しているようなキャラクターなのですが、宮野さんが月山をとてもいきいきと演じていることが伝わってきます。月山がハンカチに染み込んだカネキの血の香りを嗅いで、そのかぐわしさに絶叫するシーンは、まさに宮野さんにしか出せない変態性を感じましたね。
人間として生きたいけれど、ヒトの血肉にどうしようもなく食欲を刺激される喰種でもあるカネキが、快楽と倫理観の狭間で揺れ動く第1シーズンを経て、第2シーズン「東京喰種トーキョーグール√A」では、喰種として生きることを選んだカネキがアオギリの樹のメンバーとなり、第3シーズン「東京喰種トーキョーグール:re」からは、佐々木琲世という青年が主人公となるなど、ドラマチックな展開が続きます。
「ヒトを食べたい」という絶対に理解できない部分と、「人間でいるためにヒトは食べてはいけない」というカネキの葛藤に共感できる部分。その両方があるのが、「東京喰種トーキョーグール」という作品の魅力なのかもしれないですね。
取材・文=中村実香
岩井勇気●1986年生まれ。幼稚園からの幼なじみである澤部佑とのお笑いコンビ「ハライチ」として活躍。新潮社「僕の人生には事件が起きない」 「どうやら僕の日常生活は間違っている」が累計20万部突破。放送されるアニメ作品はすべてチェックし、毎日放送「岩井 狩野 えびちゅうの推しかるちゃー」やABEMA「SHIBUYA ANIME BASE」など、漫画やアニメに関する番組でもMCを務める。
放送情報【スカパー!】
「東京喰種トーキョーグール」(全12話)
放送日時:2024年8月3日(土)11:00~
「東京喰種トーキョーグール【JACK】」
放送日時:2024年8月3日(土)16:27~
「東京喰種トーキョーグール√A」(全12話)
放送日時:2024年8月4日(日)11:00~
「東京喰種トーキョーグール【PINTO】」
放送日時:2024年8月4日(日)16:33~
「東京喰種トーキョーグール:re」
放送日時:2024年8月5日(月)スタート 毎週(月)~(金)12:00~
「東京喰種トーキョーグール:re(最終章)」
放送日時:2024年8月14日(水)スタート 毎週(月)~(金)12:00~
チャンネル:アニマックス
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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