安室奈美恵、海外とのシンクロや革新的なサウンド

今年、デビュー25周年を迎えた安室奈美恵。今回はそのサウンド面にフューチャーしてみたい。

結論を先に言えば、安室奈美恵のサウンドにはJ-POPの代名詞や小室ファミリーとしての側面と、小室プロデュースを離れて以降のR&BやHIP HOPに傾倒していったという側面の二つのイメージがあるが、実は一貫して、ブラックミュージックをベースにし、常に世界の最先端のサウンドを取り入れ続けてきたアーティストなのだ。

ユーロビートからTKサウンドへ

デビュー以降、『TRY ME 〜私を信じて〜』や『太陽のSEASON』など、ユーロビート路線の楽曲でヒット曲を生んでいた安室奈美恵は、1995年に現在も所属するavexにレコード会社を移籍。1995年10月25日にリリースされた『Body Feels EXIT』からは小室哲哉がプロデュースを手がけるようになる。そして、続けてリリースした『Chase the Chance』(12月4日リリース)で、自身初のオリコンランキング1位、さらにミリオンセラーを達成、『NHK紅白歌合戦』への初出場も果たし大ブレイクを迎える。

『Body Feels EXIT』、『Chase the Chance』の2曲は安室奈美恵の初期代表曲として定着しており、いわゆる歌って踊れる「カッコ可愛い」安室奈美恵を強く印象付けた。だが一方で、この頃は「小室ファミリー」という言葉に象徴されるように、小室哲哉が手がけた曲は飛ぶように売れ「TKサウンド」なるものが確立された時代でもあったが、その中でも安室奈美恵の楽曲はやや特異なものであった。印象的なドラミングや、ラップを歌唱の一部として取り込むなど、サウンド的には最先端のものだった。

『Don't wanna cry』を機に顕著になるブラックミュージックからの影響

その傾向が次の『Don't wanna cry』(1996年3月13日リリース)から明確に現れる。この曲は、前2作の速いテンポと激しいダンスとは違い、スローなテンポでグルーヴィーなサウンドで構成されており、R&Bの要素が強く打ち出されている。彼女のキャリアにとって重要な分岐点だったと言える。

続く『You're my sunshine』(1996年6月5日リリース)ではラップからのリズム転換、『SWEET 19 BLUES』(1996年7月22日リリースアルバム『SWEET 19 BLUES』収録)では歌詞にまでR&Bという言葉が現れるなどR&B要素を強めていき、初期安室奈美恵のキャリアは『a walk in the park』や『CAN YOU CELEBRATE?』『Dreaming I was dreaming』などの名曲へと続く。

TLCなどと同時代的に響きあう安室奈美恵

こうしたR&Bの要素は、アメリカのR&BグループTLCなどに影響を受けていると思われる。事実、シングル『SOMETHING 'BOUT THE KISS』やアルバム『break the rules』などは、TLCのプロデュースをつとめていたダラス・オースティンがプロデュースを担当。音楽シーンの流れを変えたと言われるTLCの2ndアルバム『クレイジーセクシークール』が1994年のリリースだったことを考えると、同時代の洋楽と安室奈美恵の楽曲がほぼシンクロしていることがわかる。ちなみに2017年の日本の音楽シーンを見ると、「洋楽」や「邦楽」といったタグ付けがほぼ無意味なほど両者はリンクし合っているが、実はその最初のアーティストが安室奈美恵だったのかもしれない。

R&B、HIP HOP、EDM、常に最先端の音楽を自分のものに

2001年8月8日リリースの『Say the word』からは小室プロデュースを離れ、自ら作詞を手がけ、やがて2005年のアルバム『Queen of Hip-Pop』に顕著なように、HIP HOPへの接近を打ち出す。また、近年はデヴィッド・ゲッタとのコラボレーション曲『What I Did For Love』ようにEDMを取り入れるなど、常に世界のサウンドの最先端とシンクロしてきた。彼女の偉大さのひとつは、そうした最先端のサウンドを取り込み続け、独自のスタイルに昇華し、それをJ-POPに自然な形で落とし込んだ点であろう。

安室奈美恵と言うと、外見の可愛さやカッコ良さ、スタイルの良さやダンスのクオリティなどがフォーカスされやすいが、MCを挟まず一気にパフォーマンスされるそのライブスタイルに象徴されるように、実はサウンド面でこそ常に革新的なアプローチを続けてきたアーティストなのだ。

Writer:山田宗太朗

※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。

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放送情報

安室奈美恵 MUSIC VIDEO HISTORY Part1

放送日時:2017年11月3日(金)19:00~

チャンネル:MTV HD

※Part2は4日(土)19:00ほか、Part3は5日(日)19:00ほか放送
※4日(土)22:00 に「安室奈美恵 スペシャル」を100%ヒッツ!スペースシャワーTV プラスで、11日(土)18:00に「安室奈美恵特集」をMUSIC ON! TV(エムオン!)で放送
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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