穏やかに過ぎていく大人と子どもの日常を...ホアキン・フェニックス＆ウディ・ノーマンの演技で見せる『カモン　カモン』

ヴィム・ヴェンダース監督のロードムービー『都会のアリス』(1973年)が好きだというミルズ監督は、モノクローム撮影を決意した。そうすることによって、ロサンゼルス、デトロイト、ニューヨーク、ニューオーリンズと舞台が移っていっても、映画の中の土地に統一感を持たせることができるという考えからだった。

転々とする場所での子どもたちへのインタビューはドラマの中に巧みに織り込まれ、大きな効果をあげて魅力十分。このインタビューを背後に置いて繰り広げられるジョニーとジェシーの旅は印象的なものになり、伯父と甥っ子の絆がかけがえのないものになっていくのがよくわかる。

ホアキン・フェニックスは子役出身。子役から大人の俳優への成長は難しいと言われながら、『ザ・マスター』(2012年)でヴェネチア国際映画祭男優賞、『ビューティフル・デイ』(2017年)でカンヌ映国際画祭主演男優賞、『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞、と次々に受賞してアメリカ映画を代表する大物になった。23歳で亡くなった実の兄、リヴァー・フェニックスも『スタンド・バイ・ミー』(1986年)などの名子役で知られていた。さて、『カモン　カモン』のウディ・ノーマンは、どんな大人に？彼の名前を忘れないで！

文＝渡辺祥子

渡辺祥子●1941年生まれ。毎年アカデミー賞の受賞予想のクイズをやっていて、出る結論は「見ないで推量する」がイチバン。つい好きな俳優や監督、好きな映画を挙げてしまう私は20数年連敗！日本経済新聞、中日新聞、ぴあなどで映画評を執筆。

子どもを対象に取材するジョニーだが、子どもの世話をした経験はなかった

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