宇垣美里のときめくシネマ>「食事」とはただ味が良ければいいだけじゃない! 「南極料理人」「シェフ」で人の絆にも心動かされる

料理人の西村が、備蓄食材を使って様々な料理を生み出していく(「南極料理人」)
料理人の西村が、備蓄食材を使って様々な料理を生み出していく(「南極料理人」)

(C)2009「南極料理人」製作委員会

氷点下54度、ちょっと足りなくなったからスーパーへ、なんてことが可能なはずもない極寒の土地で、冷凍野菜や缶詰などの備蓄食料を使って作られる料理のなんと美味しそうなことか。隊員たちが口いっぱいにごはんを頬張る姿があまりに幸せそうで、日々の料理がどれだけ観測隊員たちの心を支えているのかが伝わってくる。特にインパクト大なのが伊勢海老のエビフライ。思わずどこに行ったら食べられるのか調べてしまった......。さらに限られた資源の中、夜食にこっそり食べていた大好きなラーメンが底をついてしまったことを知った時のきたろう演じる隊長のぷるぷると震える絶望の表情といったら!そこからなんとかしてラーメンを食べさせてあげたいと苦心する西村の姿に料理人としての気概を、その後の展開には胸いっぱいになり、美味しそうにごはんを食べている人の姿は、見ているだけで人を温かな気持ちにさせてくれるのだと改めて気づかされた。ええ、我慢できなくなって私もしっかり夜食にラーメンをいただきました。出てくる料理は素朴な家庭料理が多く、「これ、明日の夕飯に作ろうかしら?」なんて献立の参考にもなるのでオススメです。

「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」を観たあとは、キューバサンドイッチが食べたくなること間違いなし
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」を観たあとは、キューバサンドイッチが食べたくなること間違いなし

(C) 2014 Sous Chef, LLC. All Rights Reserved.

■人との食事は一等美味しい、そんな当たり前に気づかされる

「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴローが監督・脚本・主演を務める「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(2014年)は、美味しそうなキューバサンドイッチとラテンの音楽にもうお酒が進みっぱなし。

ロサンゼルスの一流レストランで料理長を務めるカール(ファヴロー)は、オーナーとの対立やグルメライターとのいざこざをきっかけに店を辞める。新しい仕事を探していたところ、元妻の地元で食べたキューバサンドイッチの味に感動し、一大決心。フードトラックでキューバサンドイッチの移動販売を始めることに。息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)や親友のマーティン(ジョン・レグイザモ)と共にマイアミからロサンゼルスまで、フードトラックでの旅に出る。

カールの料理への情熱にもドキドキさせられる(「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」)
カールの料理への情熱にもドキドキさせられる(「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」)

(C) 2014 Sous Chef, LLC. All Rights Reserved.

白眉はやはりこだわりの詰まった美しい調理シーン。一つ一つの工程が丁寧に描写されていて、見ているだけで「整う」気がする。具沢山のキューバサンドイッチは、ジューっと鉄板で焼ける音やとろとろに溢れ出すチーズのなまめかしさ、カリっとしたバンズの音も相まって、胃が勝手にぐるぐると動き出し、後半はもう我慢できないくらい。お、美味しそうすぎる!次の日にはキューバサンドイッチのお店を探して食べに行きました。美味しかったけれど、あのフードトラックの形態がまた雰囲気がよくてさらに魅力的だったんだよなあ。どこかでフードトラック、走ってないかしら?

当初は微妙な距離感があった息子との関係や停滞していた人生が、フードトラックをきっかけに動き出し、やがてシェフの仕事の醍醐味に改めて気づき始める様子にもぐっとくる。ロバート・ダウニー・Jrやスカーレット・ヨハンソンと、思わずアベンジャーズを彷彿とさせる豪華な共演陣も魅力の一つ。なによりカールのサバサバとした気持ちいい人となりは見ていてどんどん惹かれていった。自分にできることをコツコツ集中して続けることのできる人のカッコよさに溢れていて、前向きな気持ちにさせてくれる作品だ。

 「レストラン」の始まりを描く「デリシュ!」
「レストラン」の始まりを描く「デリシュ!」

(C)2020 NORD-OUEST FILMS ―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINEMA―AUVERGNE-RHoNE-ALPES CINEMA―ALTEMIS PRODUCTIONS

私たちが何気なく日々活用しているレストラン、その始まりの物語たる、世界で初めてレストランを作った男の実話を基に描かれた映画が「デリシュ!」(2022年)。

1789年、公爵のもとで料理人として働いていたマンスロン(グレゴリー・ガドゥボワ)は自慢の創作料理「デリシュ」にジャガイモを使用したことで貴族たちの反感を買い、解雇される。息子を連れて実家に帰り、旅籠を営んでいたところ、ルイーズ(イザベル・カレ)という女性が弟子入りして料理を習いたいと訪ねてきた。彼女の熱意に負けてまた料理への情熱を取り戻したマンスロンは、やがて息子とルイーズの協力のもと、一般市民も料理を楽しめる場所を作ろうと決意する。

フランス革命のなか、「食」で革命を起こした男の奮闘が胸アツ!(「デリシュ!」)
フランス革命のなか、「食」で革命を起こした男の奮闘が胸アツ!(「デリシュ!」)

(C)2020 NORD-OUEST FILMS ―SND GROUE M6ーFRANCE 3 CINEMA―AUVERGNE-RHoNE-ALPES CINEMA―ALTEMIS PRODUCTIONS

ジャガイモとトリュフは豚に食わせておけばよい、と発言する貴族に、これだから革命されるんだよ、と思わずつぶやいてしまうほど反感マックス。打って変わって階級に関係なく、それぞれのテーブルにつき、コース料理を堪能する人々の姿に平等の意味を改めて感じ、胸が熱くなった。食事とは単に味が良ければいい、というものでもないのだ。皆で楽しめる食事は一等美味しい。そんな当たり前の事実に気づかされ、次の休みは友達と鍋でも囲もうかしら、なんてことを思った。

とにかくどの作品も美味しい料理に溢れているものだから、私の理性は仕事を放棄し食欲のままにもぐもぐ食べながら鑑賞してしまった。グルメ映画の唯一危険なポイントはそこ。皆さん、体調と体重と相談しながら、(時に目をつぶりながら)、グルメ映画を楽しんでください。まあ冬は体温維持のためにカロリー消費するし、生命維持のため!いいのいいの!

文=宇垣美里

宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサー・俳優として、ドラマ、ラジオ、雑誌、CMのほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。

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放送情報【スカパー!】

デリシュ!
放送日時:2023年12月7日(木)8:30~、20日(水)18:45~

ディナーラッシュ
放送日時:2023年12月10日(日)23:00~、19日(火)19:00~

シェフ 三ツ星フードトラック始めました
放送日時:2023年12月12日(火)5:30~、18日(月)18:45~

そらのレストラン
放送日時:2023年12月21日(木)18:30~、26日(火)1:25~

南極料理人
放送日時:2023年12月22日(金)18:30~、27(水)1:00~
チャンネル:ムービープラス

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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