子役出身の俳優は、世間が持つ当時のイメージに振り回され、どうしても成功へのハードルが高くなりがちだ。特にハリウッド俳優などでは、その姿かたちが激変し"お騒がせ"な存在になるケースも珍しくない。そんな中で、次世代韓流スターとして今注目を浴びているのが、23歳にして芸歴15年のヨ・ジングだ。
8歳の時に映画『サッド・ムービー』(2005年)で役者デビューを果たし、初演技とは思えない熱演を見せて評価を受けると、立て続けに、数々のヒットドラマで主人公の幼年期役に起用されたジング。映画『情熱のステップ』(2008年)、ドラマ「根の深い木-世宗大王の誓い-」(2011年)、映画『タチャ~神の手~』(2014年)と、3度もチャン・ヒョクの子役を演じてきたことも特筆すべき点だ。
元子役の俳優にとって最も難しい少年から青年への移行期には、相手を見据える強い眼差しや大人びた低音ボイスを生かし、シリアスな社会派映画に出演。5人の犯罪者に育てられた青年を演じた映画『ファイ 悪魔に育てられた少年』(2013年)や、実在の学生運動家に扮した『1987年、ある闘いの真実』(2017年)などのショッキングなテーマにも果敢に挑戦し、爪痕を残してきた。
その後は、イ・ビョンホンが2013年の同名映画で演じた"暴君と道化師"という一人二役に挑んだ時代劇「王になった男」(2019年)に出演。同作では、自身の父である王の役柄でチャン・ヒョクがカメオ出演しており、ジングとの深い縁は、ファンとの間でもよく知られている。
ジングにとって飛躍の一年となった2019年には、IUと共演したファンタジーロマンス「ホテルデルーナ~月明かりの恋人~」や「絶対彼氏。」といった現代劇に出演し、主演作が相次いだ。中でも、今までのイメージとは異なる胸キュン演技を見せ、新境地を切り開いたのは、王道ラブコメの「絶対彼氏。」(アジアドラマチックTVにて11月5日より放送)だろう。
渡瀬悠宇の少女漫画を原作に持つ「絶対彼氏。」は、2008年に速水もこみち、水嶋ヒロ、相武紗季でドラマ化された作品の韓国リメイク版で、ジングが演じるのは、女性向けの恋人用ロボット・ゼロナイン。ひょんなことから特殊メイクアップアーティストを務めるオム・ダダ(ミナ)のもとへ届けられたゼロナインは、ダダが体勢を崩し誤ってキスをしてしまったことをきっかけに、"彼女"だと認識。ダダに一途な愛を注いでいくというストーリーだ。
ファンタジックな設定もさることながら、ピュアすぎるゼロナインの突飛な行動に爆笑&胸キュンが止まらない同作。そもそも着る服がないゼロナインは、ダダの囚人服や王子様さながらのドラマ衣装をまとい登場するのだが、その絶妙なダサさが笑いを誘う。
また、ゼロナインがダダを追いかけて道から飛び出し、車にはねられるシーンでは、明るい笑顔のまま飛ばされるゼロナインに爆笑必至だ。そうかと思えば、夜になると突然、プログラミングされていたかのように男らしい目つきに豹変。ダダを抱きしめ「一人で寝るの?」という衝撃の発言や、掃除中にダダをバックハグするドキドキシーンもたっぷり。ゼロナインに少しずつ人間の心が芽生えていくさまも、ジングだからこその繊細な演技で表現され、ラストは涙なしに見られないものとなっている。
ロボットと人間の狭間で、コメディとロマンスを見事に演じ分けたジング。確かな演技力に裏付けされた新たな魅力は、今後の活躍をますます期待させるものだ。現在23歳で韓国の次世代俳優として注目されるジングが、次作ではどんな演技を見せてくれるのか非常に楽しみである。
文=津金美雪
放送情報
絶対彼氏。<完全版>
放送日時:2020年11月5日(木)9:30~
※毎週(木)(金)9:30~
チャンネル:アジアドラマチックTV (アジドラ)
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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