声優・浪川大輔「どうやったら120%で伝えられるのか?という戦い」

声優として活躍する浪川大輔が
"吹替"への想いと魅力を語る!

一人の声優に注目し、厳選した吹替作品を一挙放送しているムービープラスの「吹替王国」。
2月12日(月・祝)の放送で特集されるのは、子役からキャリアをスタートし、「ロード・オブ・ザ・リング」(2001~2003年)シリーズのイライジャ・ウッドや「ザ・レジェンド」(2014年)のヘイデン・クリステンセンなどの吹替で知られる浪川大輔。「ペルソナ4」や「Fate/Zero」などアニメ作品でも活躍する浪川だが、ムービープラスの「吹替王国」では"声優"として原点となった"吹替作品"の中から選抜した5本を連続放送する。そんな浪川に"吹替"についてインタビューをした。

-今回は、イライジャ・ウッドの「ロード・オブ・ザ・リング」全3作と、一風変わったコメディホラー「ゾンビスクール!」、そしてヘイデン・クリステンセンの「ザ・レジェンド」が放送されます。今回の放送に際して、これらの作品で登場人物が言いそうで言わないセリフをアテレコしたパロディCMナレーションが制作されましたが、収録はいかがでしたか?

浪川大輔(以下浪川):「本当にふざけてるな~と思いました(笑)。うまい具合に本編のシーンを使いつつ、すごい早い口調で喋らせていただいて。取り上げていただいたキャラクターは3人いましたが同時に録ったので、なかなか声優泣かせでした(笑)。ただ、映画はアニメと違って、一度やったキャラクターをまた演じられる機会はあまりないので、懐かしさを感じながら、新鮮さも蘇ってきました」

-子役時代からすると足掛け30年ほどの役者人生。その間、社会人経験もおありです。『ロード・オブ・ザ・リング』はまさに会社員時代に収録した作品だとか?

浪川:「よく調べてますね!?休んでいたわけではなく、普通の会社で仕事をしながら声優の仕事もやってはいたんですけど、本当に年に1本レギュラーがある...というぐらいで。その間も声優業を繋いでくれていたのは"吹替"でした。もちろん、ずっと声優は続けていきたいと思っていました。でも、気持ちだけじゃやっていけない。そこで、25歳の頃に、『ロード・オブ・ザ・リング』のイライジャ・ウッドと『スター・ウォーズ』のヘイデン・クリステンセンを初めてやらせていただいたんです。この2作があったことはかなり心強かったですし、思い出深くもあります。ましてや『ロード・オブ・ザ・リング』のDVDでは、メーキングまで吹替させていただきましたから(笑)」

-『ロード・オブ・ザ・リング』の思い出をお聞かせください。

浪川:「『ロード・オブ・ザ・リング』は本当に収録がしんどかったんです。時間も掛かりましたし、自分のターニングポイントでもありましたので、こうして取り上げていただけたことはありがたいことだと思いました。1作目の時は、全員揃って録ったんです。でも、約3時間のとても長い作品ですから、アラゴルン役の(大塚)芳忠さんが一言も喋れずに帰ったことがあったんですよ! あの芳忠さんを一言も喋らせずに帰すなんて、すごいなと思いました(笑)。そういう僕もまともなセリフはほぼなくて、はぁはぁ言っているだけとか、『ガンダルフ~』か『指輪を、指輪を』しか言っていなかったんですけどね(笑)。でも、とても録音にこだわっていて、マイクを上下に2本セットして、セリフによって録り分けたり、挑戦をしながら録っていた作品でした」

-イライジャ・ウッドを演じる際に意識していることは?

浪川:「イライジャ・ウッドだから、こういう声で演じようとはぜんぜん思っていません。ただ、彼も子役からやっているのですが、大人への転換に悩んでいたみたいなんです。僕も大人の役がなかなかできない時期があったので、そこがうまくリンクできればいいなと思っていました。今回、CMのナレーション録りで久しぶりに演じさせてもらいましたが、不思議なことにあまり忘れていませんでした。『ロード・オブ・ザ・リング』のイライジャや『スター・ウォーズ』のヘイデンは、何年も演じさせてもらっていたので、久しぶりに演じても難しいという感覚はないですね」

-では、久しぶりに演じた時に難しいと感じた方は?

浪川:「エドワード・ファーロングですね。彼はどんどん変わっていったので(笑)。猟奇的な役があったのですが、僕のなかにはそこまで振り切った部分がない気がしたので難しいなと思いました。それから、ジェイク・ギレンホールは体格も雰囲気も変わったので、難しいと感じました。でも、イライジャは雰囲気が変わっても、見た目は変わらないので、彼自身からヒントをいっぱいもらえる感じです」

-ヒントと言いますと?

浪川:「何度も演じている役者さんは、表情のクセも分かったりするので、例えばイラっとした表情に自分なりにひと文字足してみたりするんです。それから、イライジャが得意なシーンが出てくると"好きだよね、こういうの!"とかって思うこともあります」

-具体的には?

浪川:「イライジャはプロデューサーをやることもあって、カメオ的な出演をする作品の時はあんまり自分を見せたくないのかなって。『ロード・オブ・ザ・リング』はほぼドアップなので、それに抵抗しているのか(笑)、例えば机の下から出てきたり、そういうことが多いんです。そういうシーンが出てくると、こういうのがやりたいんだなと思いながら見ています。ヘイデンは僕の勝手なイメージですけど、すごく気持ちが揺れる人。甘えん坊で、体当たりのお芝居をする印象があります。イライジャはテクニカルで、ヘイデンは肉体派という感じでしょうか?」

-今回放送される5本のうち、「ゾンビスクール!」のみコメディですね。

浪川:「ふざけまくってますよね。だって、チキンナゲットを食べたら、ゾンビになるっていう、設定自体がユニークな作品ですから(笑)」

-コメディの収録は、やはりシリアス作品とはちょっと違いますか?

浪川:「もちろん原文ありきですが、伝わりにくいアメリカンジョークもあったりするので、ちょっとしたやりとりだったり、リアクションで与える印象が変わる場合は積極的にアドリブを入れたいです。コメディは、教科書通りじゃなくて良かったりもするので。例えば、ジャッキー・チェンを演じた石丸(博也)さんが分かりやすいと思うんですけど、走ってる時に『あー、疲れた』なんて、石丸さんの感想なんじゃないかと思うようなセリフを入れてくるんだけど、それがぴったり合っているように聞こえる。これが吹替の良さなのではないかなと思うんです。シリアスな映画ではできないですが、楽しい映画では日本語の楽しい部分を出しても許されるんじゃないかなと思います」

-浪川さんはアニメ作品も数多く演じられていますが、吹替との違いは?

浪川:「100%できあがった状態から演じるのが吹替で、どうやったら120%で伝えらえるのか?という戦いがあります。まだまだ極められてはいないのですが、吹替に関しては身に染みているという感じがあって、"ホーム"という気持ちで臨めます。だから現場に行くと安心します。実はアニメの方はまだ慣れてない感じがあるんです。時には皆さんが原作などを読んで人物の声を想像していることもあるので、僕がそれをできるのかな?と思うときもあります。ゼロから声を作るので、これでいいのかな?と悩みながらやっていますね。ですので、わがままかもしれませんが、吹替もアニメも両方バランスよくやりたいんです(笑)」

-この仕事を続けられている理由は、何だと思いますか?

浪川:「僕、せっかちで飽きっぽい性格なんですけど、なかなか達成感が得られないからこそできることがもっとあるのではないかなと思って続けられているんじゃないかな。そして、表の人間ではないので、おごることは一生ないと思います。僕、"全盛期は12歳です"とよく言うんですけど、あの頃はやってやる!と思っていたので。でも、今はまったく(笑)。ただ、いただいた役は全力でやらせていただいてます」

-では、最後に番組をご覧になる皆さんにメッセージを。

浪川:「『ロード・オブ・ザ・リング』を含め、5作品連続で放送するんですよね? ムービープラスさんは何を考えてるんですか?(笑) これだけで10時間以上ありますよ!? とはいえ、吹替がこうしてクローズアップされることはとてもうれしいことですし、吹替もとてもこだわって作られていることを皆さんに知っていただければと思います。僕にとって吹替は、いろんな挫折をしながら人生を懸けてやってきた、お芝居のホームだと思える仕事です。映画自体の面白さを感じていただければ、それだけで十分です。そして、皆さんに楽しんでいただけたら、僕も達成感を得られると思います(笑)。ぜひご覧ください」

PROFILE/なみかわ・だいすけ
'76年4月2日生まれ、東京都出身。声優、俳優、ナレーション、監督など幅広く活躍。幼少期には「E.T.」のエリオット、「ネバーエンディング・ストーリー」のバスチアン、「グーニーズ」のマイキーなど、名だたる映画の主役を吹替。その後もイライジャ・ウッド、ヘイデン・クリステンセンに加えて、レオナルド・ディカプリオやジャスティン・ティンバーレイク、韓国人俳優パク・ユチョンなどの吹替を担当している。アニメでは「ルパン三世」シリーズの石川五ヱ門役を'11年より演じ、「Fate/Zero」のウェイバー・ベルベットや「東京喰種トーキョーグール」、「機動戦士ガンダム」シリーズなど人気作に多数出演している。

※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。

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放送情報

吹替王国 #13 声優:浪川大輔

放送日時:2018年2月12日(月)10:15~

チャンネル:ムービープラス

番組説明:
ムービープラスの人気企画「吹替王国」の第13弾に、声優・浪川大輔さんが登場。今回の吹替王国では浪川さんがイライジャ・ウッドの吹替をした『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ゾンビスクール!』のほか、ヘイデン・クリステンセンを演じた『ザ・レジェンド』など、計5作品を連続放送。

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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