声優として数々のアニメ作品でメインキャストを務め、アーティストとしても活躍する水瀬いのりが、7月20日に約3年ぶりとなる4thアルバム『glow』をリリース。この"輝き"を意味するタイトルには、さまざまなシーンに合わせた"輝き"を音楽で表現したいという思いが込められているという。さらにその思いを受け継いだリード曲も「glow」と命名。MV撮影もした本作の印象や、新作アルバムにかける思いを聞いた。
――約3年ぶりとなる新アルバムのリリースですが、水瀬さんにとってこの3年間はどんな期間でしたか?
「コロナ禍というものを本当に大きく感じた期間でした。この期間で感じた思いや、自分がコロナ禍をどう過ごしたかがアルバム制作においてもヒントになっています。日常に定着するほどの長い時間をみんなで経験して、当たり前だと思っていたことが当たり前じゃないということに気付けたことは、私にとってプラスになったとも感じています。アルバムをリリースするにあたって、失って初めて気付くような大切なものを、なるべくひとつでも多く拾い上げて自分の宝物にできるような人でありたいとすごく感じたので、どこか体温があるような、温かいアルバムにできたらいいなという思いで、過去のアルバムよりも世界観が身近で寄り添えるような音楽を作っていきました」
――どうして「glow」というタイトルにされたんですか?
「過去のアルバムだと、物語性や何かを象徴するものがタイトルになっていたんですけど、今回は今まで私がアルバムで確立してきたテーマみたいなものから外れて、『glow』というひとつの単語だけで語れるくらい、大きな旗のもと作っていきたいという気持ちがあって、タイトルはスパッと『glow』にしました。リード曲のタイトルも同じなんですけど、歌詞のイメージやアルバム全体のイメージが先に決まっている中でしっくりくるものを探していて、やっぱり『glow』がいいねという話になった時からすべてが走り出した気がしています」
――リード曲となった「glow」という楽曲ですが、出来上がった時の印象はどうでしたか?
「すごく自分の歌だなって思った曲でした。私が私らしくあるために作っていただいた曲のように感じていて、自分を表す楽曲を聞かれたら迷わず『glow』って答えるくらい、背伸びも遠慮もしないでいられる、自分が詰まった曲になりました。アーティスト活動する中で、そう思える歌をいただけたことはすごく大きな出会いだと思います。これから先、自分を見失った時に、きっとこの『glow』が自分の迷いや戸惑いを正してくれる存在になるのだと思うし、いろいろと変化しても私のゴールのひとつだと思える曲になってくれると思います」
――歌詞も未来より今までのものを大切にするような歌詞になっていて、心に響くものがありました。
「最後の『未来に筋書きなんて何もいらない』というフレーズは私もすごく安心しました。作詞した岩里祐穂さんがこの言葉を書いてくれたときに、すごく自分を肯定してくれたような気持ちになったんです。私は未来について問われたりするのが苦手で、『どんなアーティストになりたいですか』『どんな歌を歌っていきたいですか』と聞かれても、今を生きるのに精いっぱいで未来のことなんて未来にならなきゃわからないっていつも思っていたので、そんな中で岩里さんが書いてくれた歌詞に、そういう答えがあってもいいんじゃないかと思わせてくれる部分があったことは、私にとってとても救いでした。もしかしたら私の活動を見てそれを感じてくれたのかな。アーティスト活動する中で、未来のことは何もわからないけど続けていくことに意味があるということを、私自身も体感しながら思ってきたことだったので、すごく気に入っています」
――未来を問われる活動が多い中で、今を大切にする考え方には癒されますよね。
「やっぱり、失敗してうまくいかないことがあっても、その時の自分を大切にしてあげたいなと思っていて。自分に喝を入れるのももちろん大事なんですけど、失敗しても頑張った自分はちゃんとそこにいるわけじゃないですか。自分に甘いだけだと思われるかもしれないですけど、失敗した自分よりも頑張った自分を伸ばしてあげたいなと私は思うタイプなので、そういう思いが『glow』にも投影されているような気がして、自分らしく歌える楽曲に出会えたなと素直に思いました。そういう音楽を集めたアルバムになっているので、きっと本能的に自分の深層の部分で好きな音楽が詰まっていて、年齢の変化があったとしても変わらない、自分が求めるものたちを集めたアルバムができたかなと思っています」
――新曲「glow」はMV撮影もされていますが、印象に残っていることはありますか?
「光に包まれるシーンがすごく印象的で、誰もが思い浮かべる温かい光に包まれていく様子はこの楽曲のテーマにも通じる部分があるので、映像を見たときにすごくしっくりきました。個人的には自然光がすごく好きなので、自然の中で日光浴する時間がすごく大切な時間だったし、生きてるって感じるじゃないですか。それがMVの中にも、ジャケ写の中にも収めていただけたことが今回の『glow』のテーマにも沿っていて、映像として残してもらえたことはすごく嬉しかったです。撮影もカメラが回っていることをあまり意識しないで臨めたので、余裕というか、それこそ背伸びしていない私がこのMVには収められていると思います」
―――アルバムを楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。
「ある意味、試練の時間があったからこそ、私はこのアルバムにたどり着けたかなと個人的には思っています。皆さんにも苦難を乗り越えた先にある喜びや光というものが生きている中であると思うので、その光に寄り添えるようなアルバムになれたら嬉しいなと思いながらレコーディングに励みました。でも、今回のアルバムは自分のために歌ったアルバムにもなっていて、自分が楽しむことを大前提に置いたし、自分が好きっていう気持ちや好きな音楽を大切に表現したアルバムにもなっているので、今までのアルバムのように皆さんに届けという気持ちももちろんありますが、出来上がったこと自体に満足している自分がいます。胸を張って私はいい音楽がこのアルバムで表現できたと思っているので、9月のライブツアーに向けて『glow』というアルバムを受け取っていただいて、ツアーにも足を運んでいただけたら嬉しいです」
取材・文・撮影=永田正雄
放送情報
水瀬いのり 4thアルバム『glow』
2022年7月20日発売
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