小泉孝太郎が不器用ながら優しい表情を見せたミステリー「精神分析医(サイコセラピスト) 氷室想介の事件簿~超高層ビル密室殺人の謎~」

2時間ミステリードラマ「精神分析医(サイコセラピスト) 氷室想介の事件簿~超高層ビル密室殺人の謎~」(2022年)の主人公・心療内科「氷室想介クリニック」の氷室想介は、優秀な精神分析医。ひと癖ある男だが、警視庁捜査一課警部補の田丸有希は、そんな氷室にいつも事件の捜査協力を依頼している。

ある日、超高層ビルにオフィスを構えるアパレル会社で殺人事件が発生。創業者である社長の秋元貢太郎が社長室内で死亡しているのが発見された。死因は青酸カリによる中毒死だが、社長室は内側から鍵がかけられていた。捜査協力の依頼を受けた氷室は、田丸らと共に関係者への聞き込みを開始する。疑わしい関係者は多いが、解決の糸口はなかなか見えない。そんな中、第一発見者で経理担当取締役・望月の横領疑惑が浮上。第二の殺人事件が起きてしまう。

主人公の精神分析医・氷室想介は、小泉孝太郎が演じる。本作の原作は、ミステリー界のレジェンド・吉村達也による推理小説「遠隔推理─精神分析医 氷室想介の事件簿」。数多くの小説を世に送り出してきた吉村の作品の中でも1、2を争う人気作「氷室想介シリーズ」が、初めて映像化される。小泉は、2016年と2018年にドラマ化された吉村達也原作の「朝比奈耕作シリーズ」で主人公のミステリー作家を演じたが、吉村作品で再び主演を務めることとなった。今作で演じる氷室は、「踊る大捜査線」をはじめ「森村誠一サスペンス 魔性の群像 刑事・森崎慎平」や「警視庁ゼロ係」シリーズなど多数の作品で演じてきた刑事役ではなく、精神分析医として事件に関わっている。

イケメンで頭も切れるが一癖あるせいか、氷室のクリニックは繁盛していない。しかし、聞き込み捜査の際には些細な動きも見過ごさず、精神分析を駆使して関係者の心理を読み解いていく。医師らしからぬラフな服装ながら、慈愛に満ちた表情で真っ直ぐに見つめ、心から相手を思い、温かな言葉をかける。嫌味のない優しさ、冗談もうまく言えない不器用さも自然体で演じている。2002年のデビューから変わらぬ爽やかさで、どこかとぼけていて憎めない男を好演した。

また、氷室のバディである田丸刑事は原作では男性の設定だったが、ドラマでの脚色で女性に変更し、美村里江が起用された。男勝りでサバサバとした田丸を颯爽と演じる。部下を従えた有能な刑事ぶりも格好良く、オフの時のだらけた姿とのギャップも情に厚いところも魅力的だ。

小泉と美村の共演は2016年以来の6年ぶりとなるが、中学高校の同級生という関係性にリアリティを感じさせる息の合った演技を見せた。マイペースな氷室と強気な田丸によるボケとツッコミも、互いを信頼しあっていることが伝わる。恋愛ではなく厚い友情で繋がっている、気心の知れた男女だからこその空気感が心地良い。小泉と美村によるミステリードラマの新たな名コンビ誕生を見た。

文=中川 菜都美

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放送情報

精神分析医(サイコセラピスト) 氷室想介の事件簿~超高層ビル密室殺人の謎~
放送日時: 2023年9月23日(土) 9:50~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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