松本まりかが「雨に叫べば」で見せた、ひと皮むけた表現に刮目せよ

花子は「女性であること」「新人であること」から、現場ではベテランスタッフから軽んじられ、俳優たちからも無理難題を突き付けられて、「デビュー作だからしっかりと細部にこだわって良い作品にしたい」という思いがありながらも、スケジュールや予算の都合、映検(映画のレイティングを判断する機関)にまつわる商業映画としてのルールなどにがんじがらめにされ、半ば強制的に妥協させられていく。クリエイターとして尊厳を踏みにじられるような日々を送りながら、次第に鬱憤が溜まっていく中、作品にとって絶対になくてはならないと考える「雨降らし」までも時間と予算を理由に奪われてしまう。周りには誰一人味方がおらず、ただただ自分のデビュー作が汚されていくやりきれなさに、花子は感情が決壊して号泣する。この溜めて溜めて溜め込んだ気持ちが一気に爆発する場面は、松本でなければ表現しきれないであろうギャップを見せており、松本の演技の幅の広さを感じさせてくれる。

そして何より、一番すごいのがクライマックスのシーンだ。予定通り進まない上、現場が混乱を極めているという状況に、スポンサーは監督の交代を宣告。夢破れ、1人現場から去ることになった花子をよそに、現場では助監督が監督となり撮影を再開することになるのだが、その後の花子の変貌ぶりは必見だ。物語のラストに言及してしまうため詳細は割愛するが、松本が作り上げた花子の「ひと皮むけた」変化に万人が驚かされることだろう。何かを吹っ切って腹をくくった女性の強さに、心から手を叩きたくなるはずだ。

カメレオン女優・松本まりか×希代の監督・内田英治による化学反応から生まれた松本の演技の深みや幅の広さ、引き出しの多さなどを感じながら、ひと皮むけた女性を松本がどのように表現したかにも注目してほしい。

文=原田健

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放送情報

雨に叫べば(R-15版)<R-15>
放送日時:2023年2月3日(金)22:50~
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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