真風と共に退団を決めている潤花が、エドワードとローレンス、それぞれへの異なる思いをきめ細やかに表現してみせる。溢れる情熱を思慮深さで包み隠したキャサリンの決断は、美しくも切ない。ひたすら本心を押し隠すエドワードとキャサリン、2人のやりとりに息を呑むばかりである。
ちゃっかりしているが、やるときはやる男リチャード(桜木みなと)、真面目で正義感あふれるウィリアム(瑠風輝)も、それぞれの持ち味を発揮。悪い奴なのに何だか憎めないトーマス(凛城きら)、古き良き時代を映し出す執事ジョージ(寿つかさ)の芝居が味わい深く、物語のキーパーソンでもある少年ヘンリー(亜音有星)の素朴な可愛らしさが目を引く。
イギリスが第二次産業革命を経て、世界の金融をリードした時代、そして、インドをはじめ世界各地を植民地支配していた時代の物語である。同時に、貴族階級の支配が崩れ去った時代の話でもある。
そんな大転換期の中で、慎ましやかに展開する愛の物語。正塚作品の真骨頂ともいえる繊細なセリフのやり取りをじっくり味わいたい作品だ。
文=中本千晶
放送情報
バロンの末裔
放送日時:2023年5月14日(日)21:00~
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくはこちら