阿部寛が悪党役にまぶしたひとつまみの"愛らしさ"から、俳優としての唯一無二の魅力を発見できる作品「悪党図鑑1」

クライマックスを迎える「悪党図鑑1」
クライマックスを迎える「悪党図鑑1」

⒞シネマパラダイス

同作品は、闇に潜む悪党たちがしのぎを削り、騙し、潰し、殺し合う、悪党の頂点を目指す者たちのハード・バイオレンス。チンピラの昇(阿部)は順子(真弓倫子)と出会ったことで、2人で素人相手に美人局を始める。そんなある日、ヤクザと知らずに客にした竹内(伊藤洋三郎)に順子が強姦されてしまう。仕返ししようと竹内を呼び出した昇は、待ち合わせ場所で誰かに殺された竹内の遺体を発見。竹内の死を巡り、昇は悪党たちの戦いに巻き込まれていく。

タイトルの通り、登場人物には悪党しか出てこないのだが、そんな中でも阿部は昇という腕っぷしが強く悪知恵の働くチンピラを熱演。粗野で暴力的でありながらも、ある種"気持ちのいい悪者"として昇を描き出している。というのも、物語では男女問わずさまざまな悪党がしのぎを削るため、ねちっこい者、クールな者、ひと癖ある者、上手な者など、いろいろなタイプの悪党が登場するのだが、阿部は観ていてねじ曲がったような不快感を感じさせない悪党を表現。例えば、竹内に仕返しをするために正面切って呼び出したり、行動原理も悪は悪だが嫌悪感を抱かせるようなものではない。それは、あくまで阿部が、昇を嫌われるようなキャラクターにならないよう、ひとつまみの"愛らしさ"みたいなものを、演技でまぶしているからだ。

このひとつまみの"愛らしさ"こそ、阿部の俳優としての特徴だといえる。どんな癖の強いキャラクターでも"愛らしさ"をまぶすことで、観る者に感情移入を促し、役を憎めない存在へと昇華させているのだ。

アウトロー感あふれる役を演じる中で垣間見える、阿部の観る者を味方に引き込むひとつまみの"愛らしさ"を感じ取り、阿部が演じてきたさまざまな"クセ強キャラ"に共通する憎めないキャラづくりに思いを馳せてみてほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

悪党図鑑1
放送日時:4月9日(火)03:30~
放送チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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