佐藤浩市妻夫木聡の説得力のある演技に没入できる映画「ザ・マジックアワー」

(C)2008 フジテレビ 東宝

そんな豪華キャストの中でひときわ輝いているのが、街で起きていることは全て映画の撮影だと思い込んでいる村田大樹を演じる佐藤浩市。これまでも、「新選組!」(2004年、NHK)、「THE 有頂天ホテル」で三谷監督とタッグを組んできたが、ここまでコメディに寄った演技をするのは初めてに近い。なかでもボスを脅すためにナイフをなめるシーンは、本人が後日、「コメディはどこまでがOKか、OVER DO(やりすぎ)にならないかの塩梅なんです。やり足りなければ笑いは起きないし、やりすぎても白けてしまう。どうやろうかなっていうのを風呂場の鏡で見ながら...」と語るほど悩んだ迷シーン。今でも、"佐藤浩市=ナイフ"と言われるほど語り草になっている。

オーバーだけど村田ならやりかねないと思える絶妙なバランスで成り立っており、ここまで村田が"芝居が古い三流役者"であることを観客に納得させていた佐藤の演技があったからこそ映えたといえるワンシーンといえる。また、当時の佐藤浩市といえば少し影のある役を得意とする二枚目俳優で、そんな彼が眼光を光らせてナイフをなめるので、そのギャップも笑いを増幅させていた。

(C)2008 フジテレビ 東宝

また佐藤同様、物語に引き込ませているのが妻夫木聡。自分たちが助かるために村田をダマし、すべてを仕込んでいる人物でありながら、あたふたと奮闘している姿を見ると、備後も悪い人ではないと思わす。これも妻夫木のどこか愛らしく憎めない演技だからこそ。"濃い"佐藤とのバランスもマッチしていた。

太陽が沈んだ後の、まだ辺りが残光に照らされているほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯を意味する"マジックアワー"をタイトルにした本作。観ていると、何が現実でどこまでが映画なのか分からなくなってくる。また、俳優それぞれの演技も誇張しているのにどこかリアルで、こんな人がどこかの世界にいるのかも...と思わす魅力を持っている。ぜひ、映画だから実現した豪華キャストの共演と予想もつかないストーリーを楽しみたい。

文=玉置晴子

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放送情報【スカパー!】

ザ・マジックアワー
放送日時:5月4日(土)15:15~
放送チャンネル:WOWOWライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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